2013年1月/日々雑感:よくわからないこと?!

2013年1月

【Crossroad誌:掲載記事】 『入口のある部屋』(小林香織)(2012年12月号)

 【Crossroad誌:掲載記事】 『入口のある部屋』(小林香織)(2012年12月号)

日本語と中国語のバイリンガル・マガジン『Crossroad誌』本年12月号に以下の記事が巻頭エッセーとして掲載されましたのでご紹介させていただきます。
 
毎月このような形で同誌の『巻頭エッセー』として、日本の若手アーティストを紹介する記事を書かせていただいております。同誌は、中国の華南地方(主として 広東省と香港)を中心に、ビジネス情報を主体としてはいますが、文化や芸術等様々な情報を発信している雑誌です。編集部は、広東省・深圳市にあります。
 
今回は、「小林香織」さんの『入口のある部屋』という作品です。
 
作品タイトル:『入口のある部屋』
 
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コメント:
 
この作品を見ていて、もうかなり古い作品だが、「コレクター」という映画を思い出した。アカデミー監督賞を3度も受賞しているウィリアム・ワイラーが監督で、彼の代表作でもある「ベン・ハー」とは対極にあるようなほとんど主人公である2人しか登場しないような映画です。その作品では、蝶の採集が唯一の趣味という孤独な銀行員フレデリックが、前から気に入っていた美術大学に通う女性ミランダを誘拐し、地下室に監禁します。フレデリックは、その地下室にミランダが気に入りそうなものを備え、彼女が不自由なく生活出来るような環境を整えることで、彼女が彼のことを理解してくれ、彼女の愛を得られると考えていたのですが、彼女はそのような監禁状態からの自由を求めて逃れようと抵抗します。結局、彼女は衰弱して亡くなってしまい、フレデリックは別の女性を次のターゲットとして定める、というものです。
 
この作品のタイトルは、「入口のある部屋」となっていますが、部屋というものは通常入口があるものですから、あえて「入口がある」とされているのは、逆になにか閉鎖された空間・環境というものが想起されます。また、上に向かう階段があることや、窓のない少し暗い様子から、先の映画「コレクター」で描かれたような「地下室」が連想されます。登場人物は、女性が2人、男性が3人と多く、鏡に映っているのも人格を持った人のようで、これらの様子からは女性が監禁されているように見られます。
これらの女性は、ミランダのように逃げようとしているのでしょうか?逃げたいと思っているのでしょうか?あるいはどうしたらよいかわからなくなってしまっているのでしょうか?
 
また、この場面は、「現実」なのでしょうか?あるいは「非現実」の世界なのでしょうか?「非現実」であれば、逃げようとしているのは誰なのでしょうか?どこから、何から逃げようとしているのでしょうか?これをイメージしているのは誰なのでしょうか? 
 
この作品に登場する2人の女性は、男性に強い視線を向けていたり、あるいは男性の手を強く掴んでいたりと、自由に向けての強い意志のようなものが感じられます。これらの結果がどうなるかはわかりませんし、これらが「現実」なのか、あるいは「非現実」なのかもわかりません。しかし、これらの様子からすると、心にかかっている強いストレスを緩和しよう、回避しようという「防衛的行動」が行われているのではないでしょうか?作品に登場する女性たちが逃れられたかどうかは定かけではありませんが、この「現実」ないしは「非現実」を作り出した人は、その作業のプロセスを通して、その目的を達成しているのではないでしょうか・・・
 
略歴:
 
1986年  埼玉県生まれ  
2008年  武蔵野美術大学造形学部油絵学科卒業  
 
グループ展 
 
2011年  「JAPANCONGO」 Le Magasin-Centre National d’Art Contemporain、
(グルノーブル・フランス 
2010年  「VISIONS / RECOLLECTIONS 」 (山本現代、東京) 
2009年  「Parabiosis」 (SOKA ART CENTER、台北)  
2008年  「横浜アート&ホームコレクション展」 (横浜ホームコレクション、神奈川)
「YAMAMOTO GENDAI Future Feature vol. 4 ―第三者―」 (山本現代、東京)
「第31回東京五美術大学連合 卒業・修了制作展」 (国立新美術館、東京)
「平成19年度 武蔵野美術大学卒業制作展」 (武蔵野美術大学 、東京) 
2007年  「理化学研究所展示プロジェクト2007」 (理化学研究所横浜研究所、神奈川)
「ザジーと馬と海」 (武蔵野美術大学芸祭、東京)
「赤いけむり展」 (武蔵野美術大学課外センター展示室、東京) 
2006年  「ろっこつ5本展」 (武蔵野美術大学芸祭、東京)
  「油絵学科3年コンクール」 (武蔵野美術大学、東京)
「混老頭」 デザイン・フェスタ・ギャラリー、東京 
2005年  「油絵学科2年 進級制作展」 (武蔵野美術大学、東京)
  「コスモスコスモ展」 (Orange Gallery、東京) 
 
受賞歴 
 
2007年  「理化学研究所展示プロジェクト2007」 副所長賞  
2006年  「油絵学科3年コンクール」 川口起美雄個人賞  
2005年  「油絵学科2年 進級制作展」 島州一個人賞  
 
 

【Crossroad誌:掲載記事】 『夢から醒めたら』(菅野静香)(2012年11月号)

 【Crossroad誌:掲載記事】 『夢から醒めたら』(菅野静香)(2012年11月号)

日本語と中国語のバイリンガル・マガジン『Crossroad誌』本年11月号に以下の記事が巻頭エッセーとして掲載されましたのでご紹介させていただきます。

毎月このような形で同誌の『巻頭エッセー』として、日本の若手アーティストを紹介する記事を書かせていただいております。同誌は、中国の華南地方(主として 広東省と香港)を中心に、ビジネス情報を主体としてはいますが、文化や芸術等様々な情報を発信している雑誌です。編集部は、広東省・深圳市にあります。

今回は、「菅野静香」さんの『夢から醒めたら』という作品です。

作品タイトル:『夢から醒めたら』

夢から醒めたら.jpg

コメント:
 
「夢から醒めたら」、どうなっていたのだろう?何が起こっていたのだろう?
 
中国で老荘思想の始祖の一人と言われる荘子による有名な説話として「胡蝶の夢」がある。
ある時、荘周は夢の中で胡蝶となった。喜々として胡蝶になりきっていた。 自分でも楽しくて心ゆくばかりにひらひらと舞っていた。荘周であることは全く念頭になかった。はっと目が醒めると、自分は荘周であった。
これは、荘周である自分が夢の中で胡蝶となったのか、自分は実は胡蝶であって、いま夢を見て荘周となっているのか、いずれが本当か自分にはわからなかった、という説話だ。
 
荘周と胡蝶とには確かに、形の上では違いがある。しかし、主体としての自分には変わりは無い。また、夢と現実というものが対立して現れるが、そのどちらが真実の姿なのか?胡蝶であるときは胡蝶であり、荘周であるときは荘周である。そのいずれも真実の姿であり、自分であることに何ら変わりはなく、どちらが真実の姿であるかを論ずることはあまり意味がない。それよりも、そのどちらをも肯定して受け容れ、その場でせいいっぱい生きてゆくことが肝要なのでしょう。「夢が現実か、現実が夢なのか?しかし、そんなことはどちらでもよいことだ」と荘子は言っているのだそうだ。
一見、すべてを突き放してしまうような考え方に思えるが、逆にすべてを肯定的に受け入れているようでもある。
 
この世のものは、すべて変化していきます。万全と思われるものも、また儚いと思われるものも、すべて変化していきます。すべてがその変化していく過程に過ぎません。「儚い」と見えるものも、「万全」と見えるものも、本質においては何ら変わりのないものなのでしょう。
 
この作品では、「夢から醒めた」自分、あるいは「夢から醒めた夢を見た」自分なのかはわかりませんし、またそれにあまり意味はないかもしれません。しかし、そこにいる自分はコンセントとつながっており、そのコードを通じて「命のもと」となるようなエネルギーをもらっているかのようです。
その自分の姿を見つめる少女の真剣な眼差しからは、自分の生をあるがままに肯定的にとらえ、前向きに生きていこうというような強い意志が感じられます。
少女のワンピースに描かれた胡蝶がそこから飛び出して舞うこともあるだろうし、隣に描かれた百合の花はまだ蕾のままだがそれが咲く日もそう遠くはないだろう。
 
略歴:
 
1985年 東京都生まれ。
2010年 女子美術大学大学院美術研究科美術専攻(洋画研究領域)修了。
現在、同大学専任助手。
 
受賞: シェル美術賞2009本江邦夫審査員奨励賞
第30回損保ジャパン美術財団選抜奨励展秀作賞受賞。
 
個展:
 
2009年 「菅野静香~生まれいずるもの~展」 (相模原市民ギャラリー/神奈川)
「mystic」 (gallery坂巻/東京)
2010年 「菅野静香展」 (Shonandai MY Gallery/東京)
「菅野静香」 (gallery坂巻/東京)
2011年 「サヨナラサンカク」 (gallery坂巻/東京)
2012年 「世界のどこかに消えたこども」 (gallery坂巻/東京)

【新年のご挨拶】

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