2011年9月/日々雑感:よくわからないこと?!

2011年9月

コメがなくなる?:マスコミ報道には注意を

910日付の東洋経済で「コメが足りない」という特集が組まれていた。サブタイトルは「放射能、大豪雨・・・実りの秋にコメ不足大パニックに迫る!?」というものだ。

中の記事を見ないで、中刷りだけで済ませてしまうと、ただ危機感だけが高まって、買いだめに走るということにもなりかねない。(原発事故以降に、一時、コメの買いだめをする人たちがいたのは事実だが、家庭でコメを長期保管するのはそう簡単ではないので、注意が必要)記載されているデータをよく見れば、それほど騒ぐ必要はないということがわかるのだが、しかし、全体としては危機を煽るような表現が目立つ。出版社は雑誌が売れればよいのだろうが、むやみに騒ぐことで、ただでさえ余剰の米の価格を引き上げることになって、一部の業者のみが利益を得るということにもなりかねない。

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実際のところはどうなのだろうか?コメ消費は、長期的に減少傾向で、総需要は11年度は年間で約805万トンだ。それに対して、10年度の民間在庫が182万トンある、これに、11年産米が、795万トンくらいと見込まれている。これに、場合によっては、政府備蓄米88万トン、米穀安定供給確保支援機構が市場から買い上げた17万トンがある。これらを足しあげると1082万トンになる。(実は、これ以外に、ミニマムアクセス米77万トンもある)従って、味などにこだわらなければ供給量そのもには問題ない。

原発事故で放射線物質による汚染も懸念材料であることは事実だが、仮に、6県(宮城・福島・茨城・栃木・群馬・千葉)の生産量がゼロだとしても、これらの6県の生産量が175万トンであるので、問題は起きないはずだ。 

1993年に、コメが不作に陥り、大騒ぎをしたことがあった。あの時は、海外からコメを輸入しなければならないというので、海外で主として作られている長粒種がまずいということが繰り返し報道された。日本人が食べるジャポニカ米とは種類が異なり、調理の仕方も違うのだから、当たり前だったのだが・・・しかし、騒いだ結果がどうだったかと言えば、輸入したコメはもちろんだが、国産米も余ってしまったということがあった。マスコミなどから出される情報(事実関係はもちろんだがその報道の仕方)には注意が必要だ。

ついに出てきた石破発言:「核の潜在的抑止力」維持のため原発続けるべき

今までほとんどタブー視されてきた意見が出てきた。自民との石破氏が、「核の潜在的抑止力」維持のため原発続けるべき、との発言を行った。http://www.news-postseven.com/archives/20110921_31301.html

日本では「核の平和利用」ということで、原発誘致を進めてきましたが、原子力=核というのは海外では常識でしょう。北朝鮮でも、平和利用といって核開発を進めてきたわけです。「核の平和利用」と言い出したのはアイゼンハワーですが、これはアメリカが金儲けの為に言い出したことです。既によく知られたことですが、日本の政治家では中曽根康弘氏が最初に取り組んだのですが、これはCIAのエージェントだった正力松太郎の働き掛けによるものです。「核の抑止力」というのは政治家の間では当たり前のことでしたが、公にこれを発言する人はいませんでした。それが、ここへきて出てきているのです。

エネルギーだけの問題ならば、「トリウム原発」という選択肢もあるはずだ。これは1960年代にアメリカで開発されたものだが、トリウム→ウランという過程でプルトニウムが生成されない。そのため商用化されることはなかった。現在ではインドで1基あるだけだ。つまり、平和利用と言いながら、どの国でも核につながる「プルトニウム」が前提になっているわけだ。

今回の福島第一原発3号炉で秘密裏に核爆弾を作っていたので、それが破壊されたという話も出ている。資源がないと言われてきた日本にとってエネルギー政策は非常に重要だ。先の太平洋戦争も石油の確保がそのきっかけともなった。アメリカなどが断念した「高速増殖炉」を手掛けているのも「核燃料サイクル」のこともあるが、プルトニウムの問題が大きいだろうし、日本がエネルギー問題で主導権を握ることにもなる。

しかし、この「抑止力」の中身については議論が必要だろう。

公務員の人件費削減や国家議員の定数削減はどうなった?:みんなの党が改めて国会議員の給与カットを訴える

最近のニュースは、増税に関することばかりだが、「成長戦略」や「行政刷新」はどうなってしまったのか?メディアもこのあたりをしっかりと伝えてほしい(残念ながら、ほとんど期待できないが・・・)。そうした中で、みんなの党がそれはおかしいと反論している。http://www.j-cast.com/2011/09/22108049.html

野田首相は、いみじくも国会の冒頭演説で、無駄を削減して、どうしても足りない時に、増税を、という趣旨の発言をしていた。にもかかわらず増税の話ばかりが出てきており、「成長戦略」や「行政刷新」の話がどこかに飛んでしまった。朝霞の100億円公務員宿舎の建設などは野田首相自らがGOサインを出していたというものだ。

当初の民主党のマニフェストや自らが言った「言葉」のとおりに、やると言ったことは着実に実行してもらいたいものだ。鳩山さんや菅さんの発言が国際会議で無視されて様に、政治家の言葉がここまで信用できなくなってしまったのは悲しいことだ。本当に言ったことを実行しようと思っているのであれば、国会議員の給与カットくらいは無期限で続けてもらいたいものだ。金額はそれほど大きなものではないが、そのくらいの覚悟を見せないと、公務員の人件費削減などできるわけがない。また、国会議員の定数削減問題もある「のだ」。

最近、2010年の民主党のマニフェストを見てみたが、「実現したこと」の欄に55項目も記載してあった。ここまで嘘つきの政党も珍しい。よくも恥ずかしくもなくそこまで嘘を書けるものだ。まあ、菅さんの写真集だからしょうがないか・・・

除染の限界:そう簡単には自宅に戻れない:住民には早く現実を伝えるべき

政府は「緊急時避難準備区域」を930日に解除すると発表しました。その「解除の要件」は、各自治体の「除染方針」によって復旧計画ができた、ということだそうです。しかし、それについて、神戸大学の山内知也教授が、国際環境NGO FoE Japan、福島老朽原発を考える会の要請をうけて実施した渡利地区における除染の調査結果を発表し、「除染」のモデル地区でさえ高い線量が計測されており、『文字通りの「除染」は全く出来ていない』と報告しています。http://list.jca.apc.org/public/cml/2011-September/011959.html

http://www.foejapan.org/energy/news/pdf/110921_2.pdf

原発事故発生以来、政府発表は、かつての大本営発表と同じで、「安全・安心」を垂れ流すだけです。確かな情報もなく、ただ「安全・安心」と言われても、かえって心配になるというのが現実でしょう。

上記の報告にもあるように、除染を行うと言ってもそう簡単ではありません。現状でも、まだまだ高い放射線量が計測されていますし、またその計測はガンマー線のみの計測です。原発からそう遠くないところであれば、ガンマー線だけでなく、アルファー線やベータ線を出す放射性物質もあるでしょう。そのようななかで、そう簡単に解除してしまったら、被ばくする人を増やすだけではないでしょうか?子供や女性への影響はさらに心配です。

また、正確な情報が流されていないことも問題です。避難している方々には大変お気の毒ですが、そう簡単には元の自宅には帰れないでしょう。にもかかわらず、政府は近い将来に自宅へ帰れるような印象を与えたままです。最近、菅さんが「首都圏の3000万人が避難するような事態も想定した」とお気楽に発言していますが、現実はそのくらい深刻なものだったし、今もそうなのだと思います。避難している方々が、新しい生活を始めるためにも、しっかりと現実を把握するということが必要です。政府には、正しい情報を公開することを望みます。

オバマ・野田会談の内容は如何に?:「普天間で結果出す時」オバマ発言を総理が否定

野田首相とオバマ大統領の首脳会談で、オバマ大統領が、普天間問題に「結果を出す時がきている」と強く迫ったとされることを、野田首相は否定したとのこと。野田総理は、オバマ大統領からは「進展を期待している」と言われただけだと強調した。しかし、実際はどうだったのか?http://news.tv-asahi.co.jp/ann/news/web/html/210923012.html

政府発表は、かつての大本営発表ほどひどくはないが、海外での会見内容について、脚色して報道することが少なくない。昨年の尖閣諸島問題では、当時の前原外務大臣が、クリントン国務長官との会見内容を事実とは違う内容を伝え、中国側をかえって刺激することになった。その後の、前原氏の対応はみなさんご存知の通りで、非常にがっかりさせられた。

今回の首脳会談はどうだったのか?以下、White HousePress Briefing(首脳会談後のカーニー大統領補佐官によるもの)のリンクを張る。http://www.whitehouse.gov/the-press-office/2011/09/22/press-briefing-press-secretary-jay-carney-and-deputy-nsa-strategic-commu

日米両首脳の会談については、一番最初の報告されている。しかし、非常に短い報告で、ここでは「様々な議題について議論した」くらいのことしかわからない。質疑応答が始まって、そのほとんど最後のところで、「沖縄については擬態的に何が話し合われたのか?」という質問があり、回答がなされている。以下、その内容を添付する:

On Okinawa, I think we just want to see a resolution to the issue that is in line with the interests of our alliance and the agreements that we have. So I think that it was very much in line with the position the U.S. has taken with successive prime ministers. And we believe that it’s important to the alliance going forward to implement those agreements and to move forward.(下線は筆者)

会談の内容はどのようなトーンで行われたかはわからないが、少なくとも野田首相が言っている「進展を期待している」というだけでなく、「resolution」(結果)であり、「alliance」(同盟)にとっては「implenment those agreements」(約束事項を履行する)ことが「important」(重要)だと言っている。

その後の報道では、「結果を出す時がきている」報道が野田政権には好ましくない内容だったからだろうが、オバマ大統領が、「彼とは一緒に仕事できる」と発言したという報道がなされている。http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20110923-OYT1T00516.htm

しかし、何か勘違いしていないだろうか?この大統領の発言は、「しっかりと実行してくれ」あるいは「しっかりと実行してくれそうだ」ということだろう。普天間問題では、直近でも仲井間知事が反対意見を表明しており、解決の糸口は全く見えない。鳩山・菅と口先だけの首相が続いた後で、ここでまた何もできないと本当に米国の信頼を失うだろう。(もうすでに失っているかもしれない)

これは何も外交問題に限ったことではない、民主党政権が誕生してから、選挙を経ずに菅・野田と新しい首相が誕生した。民主党は当初のマニフェストは何も守ろうとせずに、変節を繰り返してきた。政治家が自らの口から出た言葉を守らないということに対して、国民はどのような対応を取るべきなのだろうか?我々自身も自らの頭でしっかりと考えなければならない。

野田首相の国連演説は何の為?:もう少ししっかりとした議論を・・・

野田首相の国連での演説は、「原子力安全及び核セキュリティーに関する国連ハイレベル会合」でのものだった。何のことはない、結局、「日本の原子力政策は変わりません」ということを言いに行っただけだった。http://mainichi.jp/photo/archive/news/2011/09/22/20110923k0000m010139000c.html

http://mainichi.jp/select/seiji/news/20110923ddm005010129000c.html

5月のドービル・サミットでは、前菅首相が、再生可能エネルギーの数値目標まで掲げたが、今回は、当面、現在の原発利用を継続しますというものだった。民主党が政権を取ってから、鳩山さん、菅さん、そして現野田首相と3人目だが、このエネルギー政策をめぐっても各人が言うことがばらばらだ。そもそも鳩山さんが国際会議でCO2削減目標を引き上げたために、日本の原子力に対するエネルギー依存度が52%まで高まるような計画になってしまった。それを菅さんが逆方向に変えたのだが、野田さんの演説などもう誰も聞いていないのではないか?

国としての政策は、必要があれば、どんどん変えてもらって構わないが、その前提はしっかりとした国としての議論がなされることだ。しかし、民主党になって(自民党時代が良かったということではないが・・・)、議論も何もなく鳩山さんや菅さんの場合には、ほとんど思いつきの発言だった。普通の会社であれば、社員であれば、言ったことあるいはやったこと、会社であれば事業計画とその結果としての業績は、厳しく問われる。政治家も本来はそのようなガバナンス機能が働かなければならないが、現状そのようなものは全くない。理想を言っても始まらないが、少なくとも、もう少し、しっかりとした議論をしてもらいたいものだ。

玄葉外相が中国に農産物の輸入規制緩和を要請:ただのパフォーマンスか?

玄葉外相が、中国の楊外相と会談し、福島第1原発事故に関し、地元の風評被害の実態を説明した上で、農作物輸入規制の緩和・撤廃を要請したという。玄葉外相が要請したのは、東日本10都県の農作物、食品、飼料が対象という。しかし、よくわからない・・・これでは、もともと、輸出していたものが、原発事故が起こって、中国が規制をかけて輸出できなくなったような印象を受ける。しかし、原発事故に関係なく、日本から中国への農産物の輸出には、中国側の規制があり、現状ではリンゴとナシ、それに少量の米しか輸出は認められていなかった。そのような状況に、原発事故が生じたわけだが、規制の緩和・撤廃とは具体的に何を要請したのだろうか?リンゴとナシをもっと輸入しろと迫ったのだろうか?http://www.jiji.com/jc/c?g=pol&k=2011092300056

そもそも、国内の市場が縮小する中で、農業関係者の中国市場に対する期待は非常に大きかったが、日本政府の対応は鈍かった。コメに関しても、全農などの介入で、中国への輸出の枠はあってもないに等しいものだった。加工品についても同様だが、政府が課す関税が高いために、製造コストが跳ね上がって、結局、輸出ということでは競争力が落ちて、加工品の輸入が増える中で、輸出は極端に少ないのが現状だ。

原発事故に関係なく、また東日本に限らず、日本の品質の良い農産物を輸出できるように、もっと積極的に中国はじめ海外の国々には働きかけてこなければいけなかった。中国からの観光客は、昨年と比べるとと激減している。その原因は、今までの日本政府の原発事故についての情報の信頼性が地に落ちていることにある。国民でさえ食の問題では不安を抱えているのに、ましてや事情の分からない海外の国に「安全・安心」と言ったところで信頼されるだろうか?しかし、日本の農産物の輸出については積極的に働きかけなければならないし、そのためには相互の関税撤廃なども検討すべきだ。

(補足)日本の農業は、構造的に存亡の危機にあり、TPPの問題が取りざたされるが、このままでは、TPPに入ろうが・入るまいが、それに関係なく日本の農業は絶滅する。

【Crossroad誌:掲載記事】『金曜日の装い』(大久保如彌)(2011年9月号)

日本語と中国語のバイリンガル・マガジン『Crossroad誌』9月号に以下の記事が巻頭エッセーとして掲載されましたのでご紹介させていただきます。

毎 月このような形で同誌の『巻頭エッセー』として、日本の若手アーティストを紹介する記事を書かせていただいております。同誌は、中国の華南地方(主として 広東省と香港)を中心に、ビジネス情報を主体としてはいますが、文化や芸術等様々な情報を発信している雑誌です。編集部は、現在夏季ユニバーシアードが開 催されている広東省・深圳市にあります。

作品タイトル 

『金曜日の装い』

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コメント

「金曜日の装い」という作品だ。女の子の背を向けた姿が鏡に映っているようだが、もう「装い」は終わったのだろうか?金曜日ということは、これからディナーにでも出かけるのだろうか?

鏡に映っている女の子の姿のようだが、その青色だけの背景をみると何か非現実の姿・世界を描いたかようでもある。これは、鏡に映った女の子の方が「虚」ではなく、むしろ「実」の姿であるかのような印象も受ける。あるいは、花柄の枠の内側から女の子が姿をのぞかせたかのようでもあり、手を差し伸べれば女の子に届いてしまいそうな気もする。

鮮やかな色彩で彩られた世界のなかに、またそれが鮮やかであればあるほど、奇妙な異次元空間が存在を意識させられ、うっかりするとその空間の中に引きずり込まれてしまいそうな気がする。

作家は、「他者との繊細な関係性」をテーマとしているそうだ。また、今回の「装う」ということは、化粧とも通じるものだが、他者と対峙すると同時に、自分自身とも対峙することだろう。それが、自分自身を隠すことであるのか、あるいは(ある部分を)より強調しようということであるのか?他者と協調しようというのか?あるいは他者と対峙しようというのか?はたまた、それによってどうなるかではなく、その過程そのものが重要であるのか?

作品に登場する女の子は、全て作家自身を描いたものだそうで、作家自身がポーズをとり写真に収め、それを画面に再生していくのだそうだ。この個展のオープニングで、作者はこの作品と同じ服装で登場したそうだ。そのような製作過程を通じて作家が自身のテーマと対峙していることが、作品を通して様々なストーリー(イメージ)が感じられる所以だろう。

略歴

1985      東京都生まれ

2009      武蔵野美術大学造形学部油絵科卒業

2011      武蔵野美術大学大学院美術専攻油絵コース修了  

[個展]

2008      トウキョーワンダーウォール都庁(東京)

             GALLERY MoMo Roppongi(東京)

2010      GALLERY MoMo Ryogoku (東京)

2011       GALLERY MoMo Roppongi(東京)  (1022日(土)~1119日(土)まで開催予定) 

[グループ展]

2005      「シェル美術賞」代官山ヒルサイドテラス(東京)

2007      「ワンダーシード」トウキョーワンダーサイト渋谷(東京)

             「ときめき☆ランデヴー」鑓水青年美術館(東京)

             「トーキョーワンダーウォール2007」東京都現代美術館(東京)

 「収集癖」三番ギャラリー(東京)

2008      Opning ExhibitionGALLERY MoMo Ryogoku(東京)

2009      101TOKYO Contemporary Art Fair」秋葉原UDXビル(東京)

2011      「再生 Part.2GALLERY MoMo Ryogoku(東京)

      「分岐展 」GALLERY MoMo Roppongi(東京)

池田整治著『原発と陰謀』:自らの頭で考える

「原発と陰謀」という本を読みました。著者は、池田整治という方で、陸上自衛隊で作戦幕僚も務めた危機管理と危機突破の専門家です。

かつての大本営発表のように官製メディアの情報が氾濫して、池田さんが強調しているのは、「マインド・コントロール」と「自分の頭で考えること」です。福島原発事故発生以来、「直ちに健康に影響が現れるというものではない」というように「マインド・コントロール」が行われており、それに騙されてはいけない、というものです。重要なことは、「自分の頭で考えることこそが最高の危機管理」と説いています。

今回、福島原発事故という大惨事が起きてしまいましたが、このような事態が発生してなお、「マインド・コントロール」から抜け出せないとすると、日本人はいつ、「自ら考える」ようになるのでしょうか?

野田総理に利用された松下幸之助氏の言葉

13日に野田首相が月刊誌Voice10月号に寄稿した「わが政治哲学」という文章についての印象を記させていただいたが、どうもしっくりこないで何かもやもやしていた。詳細は以下のリンクをご参照ください。→『野田首相、「いま、この時期に東アジア共同体はいらない」論文:主権を放棄した国を、世界は相手にしてくれない』(11/09/13

もやもやしていた理由は、野田総理が文章の中で引用していた松下幸之助氏の「崩れゆく日本」という書物を読んでいなかったためだ。野田総理の文章で中心となる主張は、①増税と②対米従属だった。その「増税」の必要性を説くために松下幸之助氏の文章が使われていたのだ。しっくりこなかったのは、企業経営を神様のような人が、増税ありきのような発言を本当に行っていたかどうか確信が持てなかったためだ。そこでさっそく取り寄せて内容を確認してみた。

松下幸之助氏の危機感は、政治・経済・社会・教育などすべての分野に及ぶ。つまりタイトルのとおりに、まさに「日本崩壊」を心配していたのだ。当時(1974年)と現在では経済状況は全く異なるので、詳細はここでは記さないが、訴えていたのは「あらゆる分野において抜本的な改革がなされなければならない」ということで、その為に「国民共同の力によってこれをふせぐための道を考えていきたい」ということだった。ただ単に財政のことを心配していたわけではなかった、ということだ。

野田総理には、同書の最後にある「筆をおくにあたって」の中で松下幸之助氏が非常に疑問を感じていたという以下の3点を記させていただきたい。(中でも特に②及び③)①コンピュータの導入で非常に好ましい状況になるはずなのに、現実はむしろ悪化しているようだがなぜか?②日本の国家予算についての疑問だが、戦前に比べれば、文明の利器も発達し、交通でも通信でもずっと便利になってきている。それらを利用すれば、戦前よりはるかに効率的な政治、行政が出来ると思うが、何故、賃金や物価に比べて、国費だけが突出して増えたのか?③したがって、税金も国費が増えた分だけ、たくさんとっているのだが、本当にそれだけ税金がいるのか?戦前は、納税者もはるかに少なく、税率も低かった。国家の活動が以前に比べて必ずしも活発というわけではないのに、なぜ、そんなに国費や税金がいるのか?(下線は筆者)

松下幸之助氏は自身でも言っているが経済人だ。政府や政府関係機関などの効率化が十分でないと言って、民間の経営を公的分野にも導入すべきという発言も同様にしている。その経済人の目からすれば、前記の②及び③のように公的部門の非効率性が目につき、税金や国費の巨大さが気になっていたようだ。

野田総理は、松下幸之助氏の言葉を利用して、国民に増税を迫ったが、松下幸之助氏は、むしろ逆に、政治・行政の非効率性に疑問を感じていた「のだ」「のだ」!!

福島の汚染土、最大1億m3に・・・しかしこの前提は年間で約9mSv・・・1mSvだとどれだけの広さになる?

昨日、福島の汚染土が最大1億立方メートルになるというショッキングなニュースが報じられた。これは、全国の一般ごみの処分場の残容量をほぼ使い切る規模に当たるという。http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2011091500409

しかし、中を見て更に驚いた。東大の森口教授(環境システム学)の試算というのだが、試算の前提が、空間線量が毎時1マイクロシーベルト(μSv)以上の地域を対象に除染を実施したケースを想定したという。しかし、この前提では、年間の空間線量は約9ミリシーベルト(mSv)(8.76Sv)に達する。いつから空間線量の基準を9Svにしたのだろうか?原発から近い地域であれば、体内被曝も当然考慮しなければならないはずで、単純に通常の1Svという数値を使うこと自体問題があると思われるが・・・

福島の学校の空間線量基準を年間20Svにして問題になり、最近それを従来の基準である1Svに変更したばかりだが、この試算の基準は9Svだ。いつからまた9Svになったのだろうか?出てくる数値の基準が様々で、非常にうがった見方をすれば、当初から目的があって、それに合わせて数値を出しているのではないか?と疑ってきたくなるのは私だけだろうか?

この基準でさえ、汚染された地域は福島県の7分の1に達するという。もし仮に、これを1Svで試算したらいったいどれだけの規模になるのだろうか?

 

SMAPの中国公演が本日やっと実現か!!:中国側のサインを見落とすな

SMAPの中国公演が今日やっと実現することになった。

SMAPの中国公演は、今までも計画されたが、図らずも中日間の外交問題で、中止されてきた。昨年は、尖閣諸島における中国漁船と日本の海上保安庁巡視船との衝突事故が起きたのをきっかけに、両国関係は悪化し、中国は昨年9月、SMAPの上海公演のチケット販売を中止した。さらに、その前、昨年6月に行うはずだった上海万博での公演も、警備上の問題を理由に中止されてしまった。

昨日は、唐家璇前国務委員とSMAPの会見が行われ、温家宝首相からのメッセージも伝えられた。会見は、北京の人民大会堂で行われるという、政治指導者なみの対応が行われた。温家宝首相は、本年5月に行われた日中韓の3カ国首脳会談のため来日した際に、SMAPと面談し、中国で歌を聞かせてくれるよう依頼し、両国の「調和」を訴えていた。

来年は、米国はじめ世界の多くの国で新たな政治指導者が選ばれる年だ。中国も例外ではない。このままいけば、胡錦濤国家主席の後任は習近平氏が、温家宝首相の後任には李克強氏が選ばれる可能性が高い。そのため共産党内部での権力闘争についての論評は盛んに行われている。一般的には、胡錦濤氏の出身母体である共産党青年団(共青団)と、前国家主席だった江沢民氏を中心とする上海閥(江沢民氏は本年死亡説が流されたりしている)、習近平氏の支持母体と言われる太子党(革命第一世代、第二世代の子息)の3つのグループがあげられる。

中国国内の問題をこれら3つのグループの権力闘争によって説明しようとする議論は非常に多い。また、それらの説明が非常に単純化されるので、ある意味わかりやすいのも事実だ。今回のSMAPの公演をめぐる話も、この議論で説明すれば、胡錦濤氏が進めてきた日中友好という流れにたいして、それ以前に日中の対立を煽ることで国内の支持を取り付けてきた上海閥との抗争が来年の人事をめぐって激しくなっているという見方もできる。太子党も最近は人民解放軍の内部での台頭が目立っている。また、それを陰で支えているのが上海閥だと言われている。

昨年の、尖閣諸島問題も胡錦濤氏などには事前に知らされずに、軍の一部の人間が主導したとも言われており、この3派の争いが激しくなっていうという。

今回のSMAPの公演及びそれを前にした指導部の対応は、日中関係がぎくしゃくする中で、なんとは「日中友好」を前面にだして、政治的なパフォーマンスを狙ったものだという見方もできる。日本も、民主党政権のこの2年間で、外交は地に落ちてしまった。日本にとっても、日中友好を訴えるには非常に良い材料だ。中国側のサインを見落とさないようにしたほうが良い。

しかし、残念ながら、中国の政治状況が、3派の争いだけですべてが説明できるような簡単で単純なものではないことも事実で、それを行うことは非常に危険な事でもある。これからは中国国内の政治状況からは目が離せない。

スイス・フランの賭け:資金供給額の1日平均額はGDPの55%

先に、スイス国立銀行が、1ユーロ=1.20スイス・フラン以下に抑えるために、スイス・フラン売り・ユーロ買い介入の無制限実施を発表している。通常、下落(売り)圧力にさらされる通貨の防衛には十分な外貨準備が必要になるが、問題が通貨の上昇(買い)圧力である場合、そうした制限はなく、無制限に紙幣を刷ることになる。

本日の日経新聞に掲載された記事によれば、当初の量的目標水準(2000億スイス・フラン)を大きく上回る資金を供給している。59日の1日平均額は2534億スイス・フラン(22兆円)で、目標より27%も多い。

スイスの経済規模を見ると、GDP2010年で、5224億ドル(約40兆円)で、国の予算(収入)が1840億ドル(約14兆円)となっており、非常におおざっぱに言ってしまえば、規模は日本の10分の1以下だ。()「予算」については各国ごとに基準が異なるが、スイスについてはCIAWorld Factbookを参照した。

規模的には日本よりかなり小さなスイスが、日量で22兆円を上回るような供給を行っている。これは、GDP55%にも上る。日本に当てはめてみると大雑把に言うと275兆円にもなる。発表では、市場に放出されるスイス・フランの不胎化は行わないそうなので、対ユーロでのペッグが続けば、将来的に、通貨供給量の増加の影響によってインフレや資産バブルが発生することにもつながりかねない。

今のところ、スイスに追随するような動きは見られないが、他国への影響が懸念される。極端なケースとしては、資本規制などが導入される可能性も否定できない。小国であれば、世界全体への影響は大きくはないが・・・

ご参考→スイス・フランのユーロ連動と投機資金~ジョージ・ソロスにみるヘッジ・ファンド資金の変容

 

 

フォーブスのアジア優良企業50社で日本企業はゼロ:東日本大震災の影響なのか?

フォーブスが911日に発表した「アジアの優良上場企業50社」の中に、日本企業は1社も選ばれなかった。http://j.people.com.cn/94476/7594386.html

今年は、中国大陸部の企業が23社が選ばれ、韓国が8社、インドからは7社が選ばれた。

日本企業は、6年前には13社が選ばれたが、今年はゼロ。東日本大震災の影響だというのだが、昨年も任天堂と楽天の2社しか選ばれていない。

つい先日発表された、「世界経済フォーラム」の「国際競争力ランキング11~12年版」でも日本は3位順位を下げて9位であった。このようン間調査が行われると、ここ暫くの間、日本は順位を少しずつ下げてきている。企業規模などで、中国などに比べて、劣後するのは仕方ない面もないわけではないが、このような調査で、順位を下げてきているのは、企業の在り方そのものが問われているのではないか?http://mainichi.jp/select/world/news/20110908k0000m030046000c.html

世界で最低の政治に足を引っ張られていることは否定しないが、そうとばかりも言っていられない。

中国での月餅の品質検査の合格率が96%、これが高いのか?

今年の中秋節は今週の月曜日(912日)だった。中秋節では、月餅を食べて祝うのが一般的だ。筆者も甘いものには目がないため、この月餅を買うことが多い。日本では、中に小豆の餡子が入っていることが多いが、中国の餡には様々なものがあり、ナッツなどが入っているものなどはよくあるが、卵などが入っているものもある。

以前から、この月餅は贈答用に使われることも多く、価格がとんでもなく高いものが売られており、高ければ高いほどよく売れるという話も聞く。美味しいかどうかは全く問題にならず、その価格の多寡が問題なのだ。また、よく言われることだが、日本の時代劇のように、箱の中にお金を忍ばせたり、最近ではプリペイド・カードを入れて送ったりすることも多いと聞きます。

さて、この月餅ですが、最近のニュースで、販売されている月餅の品質検査合格率が96%だったという記事が載っていた。これでも昨年よりは少しだけ高くなっているそうだが、食べ物で、販売されているもののすくなくとも4% が不合格だったというのは怖い話です。http://jp.xinhuanet.com/2011-09/12/c_131133295.htm

昨年の北京では、大学生が食べている途中で、なかに大量の頭髪が混じっているのが発見されて騒ぎになった月餅が、なんと48千個も押収されたという事件も起きています。

先日、上海蟹の偽物が出回っているということを書きましたが、改革開放以来、沿海部を中心としてかなりの数の富裕層が出現しましたが、気の遠くなるような格差が生じました。また、最近は、輸出環境が厳しくなったり、人件費の高騰などで、中小企業の経営はかなり厳しくなってきています。そのような中で、このような偽装は今後もなくなることはないでしょう。 →ご参考:「秋の味覚「上海蟹」に早くも偽物~上海蟹は食べたいが、水質汚染は大丈夫か?」

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野田首相、「いま、この時期に東アジア共同体はいらない」論文:主権を放棄した国を、世界は相手にしてくれない

今日はたまたまだが、野田総理の所信表明演説を見てしまった。鳩山氏や菅氏のように、思いつきと思われてもしょうがないような話は出なかった。逆に言えば、言葉の羅列で、頭に残ったことは何もなかった。

また、今日は、野田総理が月刊誌『Voice10月号に寄稿した「わが政治哲学」という文章も見てしまった。「「この国に生まれてよかった」と思える国にいかにつくるか」という副題がついている。

この寄稿文で頭に残ったメッセージは①「増税」と②「対米従属」だ。

「増税」については、これまでの政治の最大の問題は、「大事な問題を先送りばかりしてきたこと」とし、松下幸之助氏が日本の財政危機に強い問題意識を持っていたとして、松下政経塾を設立した問題がここにあったと言わんばかりの説明をしている。

「対米従属」については、「(外交の)『軸』は、間違いなく日米関係」と強調しています。その上で、「領土領海に絡む重大な事件が発生した場合に日本がいかなる姿勢を打ち出すべきか、あらためてシミュレーションをしておくべき」として、中国などから抗議を受けそうな意見を述べている。

さらに、ここで話題となっているのは、「東アジア共同体などといった大ビジョンを打ち出す必要はない」といっていることだ。この寄稿文では述べていないが、TPPに積極的に参加すると言っていることからすると、米国が強く要請しているものには積極的に参加するが、中国が絡むものは、検討する必要もない、と言っているようにも思われる。

09年に民主党が政権を奪った時には、鳩山由紀夫首相が「東アジア共同体」構想と「対等な日米同盟」を表明し、それまでの自民党とは違う方針を打ち出していました。結局、言葉だけ手終わってしまいましたが、何か変わるのではないかという期待が生まれました。しかし、今回の野田総理の主張は、前の民主党の主張を退け、それ以前の古い世界に逆戻りしてしまったかのようです。

世界は大きく変わっています。今、ここに至って、「対米従属」に逆戻りとはいったいどのような考えなのでしょうか?ここは、むしろ「東アジア共同体」構想を前面にして、日本が世界という場で、何をやりたいのかを積極的に打ち出すときでしょう。そうでないならば、主権を放棄したような国を、世界は相手にしてくれないでしょう。

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事業仕分けはしっかりと結果の検証を:単なるパフォーマンスで終わらせるな

蓮舫行政刷新担当相が事業仕分けの第4弾を検討しているという。http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110913/plc11091310280015-n1.htm

しかし、先に、事業仕分けで凍結されたはずの、朝霞公務員宿舎建築計画がゾンビのように復活していたことが報じられている。これは象徴的な事例だが、今まで凍結や廃止されたはずの事業の多くが復活しているということはずいぶん前から報じられている。

事業仕分けが単なるパフォーマンスに終わらないように(残念ながら現状はそうなってしまっている)、第4弾を行う前に、今まで行った事業仕分けの結果をしっかりと検証してほしい。その上で、問題点を抽出して、これからどうしたらよいのかを、示してほしい。そうでなければ、何回、事業仕分けを行っても全く意味がない。むしろ、貴重な時間とお金をどぶに捨てているようなものだ。

また、事業仕分けの結果を、しっかりと実行に移せるような仕組みづくりも、当然必要だ。

中国では「汚職や収賄は悪徳ではない」?:海外逃亡した官僚が16000人超

中国監察部が97日に、伝えたところでは、海外に逃亡した汚職官僚は16000人に上り、逃亡防止制度を構築に着するとしている。

今年6月に発表された、人民銀行のレポートによると、1990年代なかばから海外逃亡した汚職官僚、国有企業幹部は16000人超。着服した金額は8000億元(約97400億円)に達するといいます。http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=54232

つい最近、中国の高速鉄道(新幹線)の事故がありましたが、今年2月には、汚職問題で劉志軍前鉄道相が更迭されたほか、昨年10月には同省ファミリー企業のトップも拘束されました。このほか高速鉄道建設にからむ汚職容疑で鉄道省幹部ら6人が党中央規律委の取り調べを受けていると報じられています。前運輸局長の張曙光氏は米国とスイスに28億ドル(約2160億円)を蓄財していた疑いがもたれている。

これらの汚職を受けて、中国高速鉄道の計画や運行も大きな影響を受けており、安全確保の為に、高速鉄道の最高速度も当初の予定よりも大きく引き下げられています。

作家の安能務さんの「権力とは何か」という本によると、中国では、官吏の汚職や収賄は、古くから現在に至るまで、必ずしも悪徳とはされていないといいます。当の本人にもその意識はないし、周囲も、収賄で財を成した官吏を羨望はしても、排斥をすることはなかった。むしろ、汚職による蓄財は半ば公認であったといいます。たまに摘発されることがあれば、それは運が悪かったということになり、本人も反省などしない。投獄されても、獄吏を買収すれば、獄中で贅沢もできる。この「蓄財」は汚職とは関係なく、「正当な自己防衛」と考えられていたといいます。 

いまや、誰もが(どの企業も)、何らかの形で海外と関係を持たざるを得なくなってきており、特に、中国との関係は避けて通ることは出来ないでしょう。しかし、「汚職や収賄は必ずしも悪徳ではない」と考えるような人たちとどう付き合っていくかは、かなり頭の痛い問題です。

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原発事故以降、リンゴの輸出が落ち込んでいる:まずはしっかりとした情報開示を!!

先日、長野を訪問しました。ローカル線の窓からはリンゴ畑が広がっているのが見え、早いものはすでに赤く色づいているものもありました。そのリンゴですが、海外に輸出をしようということで、多くの自治体や農家が、長きにわたって大変な努力をしてきました。特に、中国で富裕層が急増する中で日本の高品質のリンゴが高額でも売れるということで、その巨大な市場に向けて、様々な試みがなされてきました。ところが、原発事故以来、海外での売れ行きが大きく落ち込んでしまいました。http://www.asahi.com/national/update/0813/TKY201108130160.html今年の初物については全く売れなかったそうです。

(注)日本のリンゴで海外に輸出されているものは、ほとんどが青森産です。市場としては、現在、中国が注目されていますが、今まではほとんどが台湾・香港などでした。余談ですが、中国が日本の農産物の輸出市場として注目されて久しいのですが、現在輸出できるのは、リンゴとナシだけです。お米は、ご存知のように、枠などの問題があります。詳細はまた別の機会に。

農産物に限らず、海外からの観光客なども大きく落ち込んだままです。観光庁が「嵐」を使ってPRビデオを作成して流しているようですが、効果が上がっているかどうかはよくわかりません。(関連情報としては、次をご参照ください。→「「嵐のPRビデオ」は「日本のイメージをおとしめる」ためのもの?:外国人記者が痛烈なコメント」

農家の方々には大変お気の毒と言わざるを得ないのですが、海外から見ればある意味止むを得ない面もあります。その理由は、何が正しい情報かわからないからです。日本政府からは、「安全・安心」というコメントばかりですが、海外では、その逆に、日本政府に危険性を訴えてもっとしっかりとした対応を迫るようなものまである状況です。情報が錯綜する中で、日本は知っていても、福島と東京の位置関係も全くわからないような人たちにとってみれば、心配になるのはやむを得ないでしょう。

大丈夫だということを理解してもらおうとすれば、(本当はまず最初に日本国民にそれを示してもらいたいのですが)、日本政府が、一体何か本当なのかを知らせることで、情報をしっかりと開示することです。また、そうでなければ、政府に対する信頼感は醸成されません。国内でガイガーカウンターが飛ぶように売れて、品切れになっているなどという状況が起こること自体がおかしいと思われます。国内ですらそうなのですから、海外で不信感が高まるのは仕方ありません。

日本政府は、わけのわからないPRビデオを作るのではなく、また、ただ「安全・安心」と連呼するのではなく、しっかりと情報を開示することです。情報があれば、あとはそれに基づいて理解が進むはずです。

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グローバルホークの福島原発情報はどこに?:情報を隠蔽する日本政府

羽田空港の主任管制官が、米大統領専用機「エアフォースワン」の飛行計画の画像をインターネット上に掲載したことが問題となっています。http://203.183.152.33/jc/c?g=soc_30&k=2011091000045&rel=y&g=int

公開された情報の中に、米空軍の無人偵察機「グローバルホーク」のものも含まれていた可能性が高まっているようです。

このグローバルホークですが、「瓊音レポート」でも報じましたが、福島原発事故発生以降、その状況を撮影していましたが、その映像が日本国内で公開されることはあまりありませんでした。それが、10日、米空軍の情報偵察当局者によって、運用状況が明らかにされました。http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110910-00000078-jij-int

赤外線センサーで原子炉の温度の測定や、原発の画像などの情報を、ホワイトハウスに報告するとともに、要望があった30以上の米政府機関にも情報提供を行ったそうです。米国の危機感を強く感じるとともに、一次情報を重要視する米国の姿勢がわかるものです。

しかし、日本政府の姿勢は、それとは正反対です。ここでも報じられていましたが、「日本政府からは画像を公開しないよう要請された」とのこと。「安全・安心」を繰り返すばかりで、本当のことを伝えようという考え方が全くなかったということがここでも示されてしました。今回の前鉢呂経産大臣の「死のまち」発言にしても、実はある意味本当のことを言っただけです。しかし、本当のことを言ってはいけないという前提の下では不謹慎な発言ということになります。(菅前首相にしても「長期間にわたって住めなくなる」という発言をした・しないが問題になりました)

福島第一原発の現況については、「冷温停止」ということが使われるようになってきていますが、2号機、3号機にはいまだ人が立ち入ることが出来ない状況です。放射性物質による汚染状況についても情報が十分とは言い難い状況ではないでしょうか?何が正確な情報かがわからない中で、残念なことに、海外からの情報の方が、正確に現状を表しているのではないか?と、思ってしまうような状況です。福島第一原発及び放射性物質に関する情報は、国民のイノチにかかわる問題ですので、情報をしっかりと国民に開示していただきたいと思います。

元の国際化を着実に進める中国と、あえて円の国際化をしようとしなかった日本

ロンドンで行われた第4回英中経済対話で、王岐山副首相は、ロンドンが人民元のオフショア市場として発展させることを支持すると述べた。

中国は、米国からの対米為替レートの執拗な切り上げ要請に、抵抗してきているが、その一方で、将来に向けての人民元の国際化に向けての施策を着々と図っている。米国からの切り上げ要請に簡単に応じないのは、日本の失敗事例を反面教師としてしっかりと研究しているからで、切り上げ要請があれば、外貨準備による米国国債への投資を盾にして、それをかわして時間稼ぎを行っている。http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=54182&type=2

時間かせぎをしながら、人民元の国際化、流通範囲の拡大に関しては、きわめて戦略的に、かつ、積極的に動き出している。また、それを行わなければならない理由も存在する。それは、為替市場で介入を行っているが、市場からの流動性を吸収するすべが限られているために、その回避策が必要になっていることだ。

具体的には、人民元による貿易決済の拡大、元建ての国債発行、元建ての金融商品の発行解禁あるいは近隣諸国とのスワップ協定の締結などだ。

また、非公式ながら、中国の国境周辺では、人民元の取引が急拡大している。

長期戦略としては、国際決済通貨として認識されるために、SDRに人民元を加えるよう圧力をかけている。この関連では、ストロスカーンIMF専務理事が辞任した際には、当初の予想に反して、フランスのラガルド氏を支持して、その代わりに初めて朱氏が副専務理事に就任することを認めさせた。これを足掛かりに、専務理事の椅子も狙っているのではないか?

また、直近では、ナイジェリアが、外貨準備高のうち510%を人民元とする方針を明らかにしている。http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=54160&type=2

5月に発表された「世界銀行の展望―多極化:世界経済の新たな構造」と題する報告書では、中国経済の規模と、その企業・銀行の急速なグローバリゼーションにより、人民元の役割が更に重要になるとされ、「2025年の国際通貨体制として最もありうるシナリオは、ドル、ユーロ、人民元を中心としたものだろう」とされた。

それに対して、日本円の影は薄い。円の国際化が真剣に叫ばれたのは、1985年のプラザ合意の頃だろう。ということは既に25年以上たっていることになる。それ以降、様々な案が出されたが、当局がそれらに真剣に取り組んできたようには思えない。GDPで世界第3位ということだが、国際世界の中では、もう日本はほとんど忘れ去られようとしているのではないか?

今年6月に開かれたビルダーバーグ会議では、中国が初めて招待された。日本は、この会議には招待されたことがなく、欧米諸国以外から招待されたのは中国が初めてとなった。このビルダーバーグの例が示すように、欧米のエリートたちからすると、日本は主権国家として認められておらず、日本と話をする意味がないと思われているのではないでしょうか?

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「放射能がうつった」発言:国会は福島に移転しろ

いつものことながら閣僚の不適切な発言が続いている。当初、「死の町」発言をした鉢呂経済産業相だが、その後、記者の体に触れるようなしぐさをしながら、「放射能がうつった」などと発言していたという。「死の町」発言を耳にしたときは、ある意味当たり前のことで、今まで情報を隠蔽してきたことの方が問題で、早く正しい状況を伝えてほしいと思ったが、放射能がうつったというような発言を聞くと、この大臣は(しかも原子力行政の担当大臣)被災者の気持ちも状況も全く理解しておらず、他人事としか考えていないという、大臣というよりも「人として問題」があると思わざるを得ない。

震災後、既に半年が経過しているが、現地での復興に向けた対応が適切に行われているようには見えない。永田町にいる国会議員の中には、いまだ他人事としかとらえていない議員も多いのではないか?しかも、原発事故については、いまだ現在進行形だ。対応次第では将来的に甚大な人的被害が拡大する恐れもあるのだから、しっかりとした対応をしてもらいたい。

その為に、国会議員の方々及び行政をつかさどる官僚の方々に、しっかりとした当事者意識を持ってもらうために、国会と官庁を福島に移すことを提案したい。今まで、「安全・安心」をくりかえしてきたのだから、問題ないだろう。また、除染なども本格的に行われるのではないか?

(しかし、除染をしても、放射性物質はなくならないので、本質的な問題解決にはならないが・・・)

過去に学ばない欧米先進国:ワシントン・コンセンサスの復活?

ギリシャに始まった欧州の債務問題は、依然として解決の糸口が見つからない。ギリシャについては、IMFも含めた形で救済策が策定されたが、結果的に、90年代以降の債務危機問題の解決策として米国中心に推し進められてきた「ワシントン・コンセンサス」と同様の政策が導入された。90年代以降の債務問題で明らかになったのは、ワシントン・コンセンサスの手法は解決策とはならないということだったはずだ。しかも、ギリシャをはじめとするEU加盟の欧州諸国についてはかつてのような自国の通貨を持たない国々だ。

かつては、成長戦略として、自国通貨安をてこにした輸出増加が期待されたが、現在欧州で問題になっている国々では、それは期待できない。

今春、ギリシャ問題が持ち上がった時、IMFのトップはストロスカーンだった。しかし、彼は、ニューヨークのホテルの女性従業員に性的暴行を加えてとして、逮捕され、失脚してしまった。ストロスカーンは、20081月のダボス会議において、(世界金融危機を乗り越えるために)「財政出動すべきだ」と発言して、従前の米国主導の「ワシントン・コンセンサス」とは異なる動きを見せ始めていました。当時、IMFは「Its mostly fiscal.(常に緊縮財政)というように言われるまでになっていました。そのIMFのトップであるストロスカーン氏から「財政出動」という言葉が出たわけですから、世界中が驚きました。しかし、ストロスカーンは失脚し(その後、彼の逮捕は冤罪であった可能性が高まっています)、ギリシャへの救済策はかつてのワシントン・コンセンサスと同様のものとなってしまいました。

本日(9日)から、G7がフランス・マルセイユで始まりますが、欧州債務問題には、どのような提案がなされるか注目です。しかし、残念ながら円高問題は真剣に議論されることはないでしょう。

秋の味覚「上海蟹」に早くも偽物~上海蟹は食べたいが、水質汚染は大丈夫か?

中国では、旧暦815日の中秋節は、春節(旧正月)、元宵節、端午節とならぶ「中国の四大伝統祭り」と呼ばれています。この日の夜は一家団欒して、庭に供え物をならべ、月を拝んで月見をし、月餅やくだものを食べ、団欒や豊作を祝います。今年は、912日で、来週月曜日です。

この頃になると、秋の味覚として「上海蟹」の水揚げが解禁になります。今年は、917日なのですが、新聞報道によりますと、早くも偽物が出回っているようです。「上海蟹」といいますが、最高級とされるのは、江蘇省蘇州市の陽澄湖産のものです。この価格は他の産地の数倍にもなります。そのために、中国ではごく当たり前のことですが、偽物が出回り、陽澄湖産とされるもののほとんどが偽物とも言われます。

そのため、偽物防止用のタグが付けられるのですが、偽物のタグまで用意されているようです。

http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=54207&type=1

さて、問題なのは、偽物だけではなく、産地の水質汚染です。陽澄湖というのは、最近は水質汚染で有名な太湖のすぐ隣です。みなさんご存知のように、太湖といえば、蘇州や無錫など現在では工場集積地帯となっており、かねてその水質汚染が問題となっています。数年前には、アオコが異常発生、近くの無錫市の飲料水が悪臭で長期間飲めなくなり、温家宝首相が原因究明と改善を指示したこともあります。また、その際、陽澄湖でも汚染が問題になり、養殖場が大幅に縮小されたこともありました。

中国の人たちは、お金儲けのためなら何でもする人たちですので、とかくなんでも極端なことが起こりがちです。上海蟹は食べたいですが、汚染のことを考えると、どうしても躊躇してしまいます。

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前原氏の訪米は何の為?

新聞などの報道によると、民主党の前原政調会長がワシントンで講演し、国連平和維持活動(PKO)で自衛隊と一緒に活動する外国部隊が攻撃を受けた場合、自衛隊が反撃できるようPKO参加5原則を見直す考えを表明した。すべての武器輸出を禁じる武器輸出三原則の見直しにも言及した、そうだ。http://www.asahi.com/politics/update/0908/TKY201109080184.html

前原氏の訪米は、国連総会で一般討論演説を行う野田首相の「地ならし」の意味合いが強いとのことだが、内容からすると、米国の要求に従いますと言っているだけで、野田首相が国連で演説を行うのであれば、「対米」ではなくて「対世界」でメッセージを発信して、「日本が世界に向けて何をやりたいのか」ということをしっかりと発信してほしい。

その為に、前原氏には、これから何を行うのかを、党内でしっかりと議論をしてもらいたい。「ねじれ国会」が問題になって久しいですが、それ以前の問題として「党内のねじれ」が問題なのだから、何も急いで訪米して、米国に媚を売る必要はない。米国も、口約束だけの民主党には、もう辟易としているはずだ(当初の対決姿勢から、一転、米国に頼り切った状態になったので、あえてこの状態を壊そうとはしないだろうが)。今回の動きを見ていると、民主党は結局何も変わっておらず、各人各人がただパフォーマンスだけを行っているとしか見えないのだが・・・

菅前首相、枝野前官房長官は何の為にメディアに登場するのか?

このところ菅前首相と枝野前官房長官がよくメディアに登場する。新聞のインタビューに答える、あるいは昨日はテレビのインタビューも受けていた。まだ、「事故調査・検証委員会」の結果報告がなされていない段階で何のためにそのような行動に及ぶのだろうか?

テレビのインタビューで菅氏が言っていたのは「全電源喪失ということを想定していなかった」ことが問題とし、事故後のことについては、「情報が上がってこなかった」、(ベントについては)「指示したのに、行われなかった」という表現に終始した。

驚いたことに、「爆発だけじゃない、もうすでに漏れていたんです・・・メルトダウンが起きていたんです」と発言している。メルトダウンについては、原子力については自身が一番よく知っていると言っているだけに、「電源停止ということは、メルトダウンが起きる」ということなのです、と言い切っている。

仮に、事故前の全電源喪失への備えが出来ていなかったこと自体に菅氏の責任がなかったとしても、そこまで原子力のことを理解している人が行った事故後の対応はどう評価されるべきなのか?菅氏は今回の非常事態の責任者であって、今回の事故については傍観者ではないはずだ。「情報が上がってこない」とか、「言ったのにやらない」とか、全てに責任を負うものが言うべきことではない。日常でもそうだが、目的を達成するために、何をどうやるかが責任者のやるべきことだ。特に政治家が日常的に行うべき事とは、様々な利害や意見などを纏めて、実際に形にしていくことのはずだ。菅氏の発言を聞いていると幼児と親の会話のようだ。

また、その後の対応についても、メルトダウンが起こっていたと断言したにもかかわらず、国民に対して全く情報を開示せずに、逆に隠ぺいしたことはどう評価されるべきなのか?

事故調査・検証委員会の結果報告がなされていないというタイミングで、菅氏、枝野氏が様々な発言を行うのは如何なものだろうか?

そういえば「事故調査・検証委員会」は内閣府設けられているのだが、何かこれらの動きと関係あるのだろうか?本来、このような事故調査は独立した組織によって行われるべきものだと思うのだが・・・

スイス・フランのユーロ連動と投機資金~ジョージ・ソロスにみるヘッジ・ファンド資金の変容

スイス国立銀行は、スイス・フランの上昇を抑えるために、1ユーロ=1.2スイス・フランを上限として、ユーロに連動させることを発表した。この上限に抑えるために、必要があれば、無制限にスイス・フランを売って介入を行うものだ。もし、これがうまくゆかなければ、巨額の損失を被る可能性がある政策だ。実際、スイスは昨年前半にもスイス・フラン売り/ユーロ買いの介入を実施して、それがうまくゆかずに260億スイス・フラン(約24000億円)の損失を出している。

また、同様に為替介入がうまくゆかなかった例としては、1992年に、ジョージ・ソロスが英ポンドを売り浴びせ、英国は介入でポンドを買い向かったが、失敗して、当時(ユーロ導入前)行われていたERMから、英国が離脱するということも起こっている。日本においても、円高を阻止するために円売り/ドル買い介入を行って生きているが、現在、それを行う外為特会では40兆円という1年の税収とほぼ同じだけの評価損益を抱えるという厳しい状況となっている。

スイス・フランの行方はしっかりと見守っていきたい。

そこで、注目されるのは、ヘッジ・ファンドなどの巨額資金の動向だ。先に触れたように、過去には、ジョージ・ソロスのように、英国やタイなどの中央銀行を打ち負かして、巨額の利益を上げた例もある。しかし、最近は、ヘッジ・ファンドなどの資金の動向が以前のように大きく注目されるような動きをしていない。リーマン・ショック以降ヘッジ・ファンドの残高は一時的に減少したが、最近はまた以前の水準を上回るような状況に戻ってきているというのにだ・・・

この理由としては、いくつか考えられる。例えば、ジョージ・ソロスが外部資金を返却してしまった理由と言われるドット・フランク法による規制強化の問題だ。

また、ヘッジ・ファンドなどの資金の投資家の内容が大きく変化したことによる運用の変化だ。ヘッジ・ファンドの投資家は、以前は、個人の富裕層が中心だったが、その後は年金などの機関投資家の資金が大きく流入している。個人の投資家の場合は、収益が上がれば運用内容などにはほとんど口を挟まなかったが、機関投資家の場合は、受託者責任の観点から運用内容の詳細な開示を求める。また、収益のダウンサイドのリスクに敏感な事から、リスクの分散を求める傾向が強い。

そのため、運用手法、運用戦略、投資対象等々の分散が必要になってしまう。かつてジョージ・ソロスが行ったような巨額の資金を集中的に投資するようなことは行われなくなっている。

サブプライム・ローン問題で米銀を提訴:貸し手責任を問う?

米ウォール・ストリート・ジャーナルによると、政府系住宅金融機関であるファニー・メイとフレディー・マックの監督機関である連邦住宅金融庁(FHFA)が、大手金融機関17行を提訴したとしている。訴えた理由は、サブプライム・ローンのリスクを正しく開示しないまま、ファニー・メイとフレディー・マックに販売した、というものだ。賠償請求額は合計で1960億ドル(約15兆円)だ。

訴えられた大手金融機関側は、訴えられた方は、ファニー・メイとフレディー・マックは、住宅ローンの専門金融機関であり、リスクについては理解していたはず、といっている。

http://online.wsj.com/article/SB10001424053111903648204576553011839747054.html?mod=WSJ_WSJ_US_News_5

しかし、ここで問題なのは、“言った言わないの問題”ではなく、そもそもファニー・メイとフレディー・マックに販売されたサブプライム・ローンが、本来貸してはいけない人たち(返済能力ない人)に対して行われたものであったということだ。サブプライム・ローン問題では、とかく、「証券化」が問題とされ、投資銀行の責任が問題となってきたが、証券化はあくまでも単なる「器」に過ぎず、中に入っているものが腐っていたらどうしようもない(これは単純化しているので、投資銀行に責任がないと言っているわけではない)。80年代後半の日本のバブル形成もそうだったが、銀行がマッチポンプのようにバブル形成に深くかかわっていたことは否定できない。米国のサブプライム・ローン問題も、そもそもの原因は銀行の「貸し手責任」にある。

2007年の問題発生以降、「Too big to fail(大きすぎてつぶせない)ということで、大手金融機関には多額の税金が投入された。ここにきて、米国の政府機関が、資金を投入して救済したはずの大手金融機関を提訴するのはおかしい、という議論もあるようだ。しかし、本来、問題発生の原因となった金融機関の責任はもっと追及されるべきだったし、これからでも遅くはない。救済されてからまだそれほど立っていないのに、経営者や従業員の報酬は他の業界と比べれば依然として相当高い。「人のふんどしで相撲を取る」ことで、天文学的な報酬を受け取っていたのに、失敗して損失をだすと、そのつけはすべて国民に押し付けて、なおかつ依然として高い報酬を得ているというのはどういうことだろうか?

ちなみに、最近、米国や日本の国債の格付けを引き下げたことで話題となった格付け機関であるが、サブプライム・ローンの証券化でも、内容をほとんどチェックすることなく、かなり高い報酬を得ていたことが以前より問題として指摘されている。しかし、格付け機関の責任や、その在り方についての議論は確かにあるが、議論はなかなか進んでいない。

生産拠点の海外移転は止まらない:国内産業でもうまく海外を取り込め!!

ここ暫くの急激な円高で、国内の空洞化が一段とクローズアップされていますが、国内企業による生産拠点の海外移転は、90年代からの大きな長期的な流れで、今に始まったことではありません。

当初は中国が移転先として選好されましたが、日中間の政治情勢などによって、度々、勢いが鈍ることはありました。しかし、トレンドは全く変わっていません。最近は、中国国内の人件費の高騰などで、タイ、ベトナムさらにはバングラデシュなどにも進出するようになっています。

日本国内では、高齢化や人口減少などによって、市場としての成長性は期待できないなかで、新興国が新たな「市場」として期待は大きく膨らんでおり、また、そこには安い労働力が存在するのですから、需要のあるところに生産拠点を移していくことは、企業としては当たり前の行動ということなりますし、そのような行動をとってきています。国内の産業空洞化は何も今に始まったことではないのです。

 しかし、大企業は、海外に進出していけばよいでしょうが、大企業の下請け(あるいは孫請け)として仕事をしてきた中小企業はなかなかそうはいきません。中小企業でも、90年代以降、大手企業が海外に進出する中で、生産拠点を移したり、あるいは協力工場を持ったりということで、中小企業も様々な取り組みをしてきたのも事実ですが、(ここでは詳述しませんが)様々な問題があって、必ずしも成功したとは言い難い状況です。どちらかと言えば、ほとんどの企業が何らかの形でうまくゆかなかったという経験を持っているはずです。

ここにきて、受注がさらに減少し、利益率も低下し、後継者もいなくなり、経営が厳しくなり、倒産ではなくとも、その前に廃業する会社が増加しています。国内の製造業を底辺で支えてきた企業群が減少することで、ますます空洞化が加速するという悪循環も懸念されます。最近の新聞には、企業誘致を行うために、新たに補助金を出すというようなことも出ていましたが、今までも同様のことをずいぶん行ってきましたが、ほとんど効果はありませんでした。日本企業は6重苦を抱えているとも言われ、もはや国内企業の海外移転を止める手立てはないでしょう。

 これからやらなければならないことは、国内に新たな仕事を作り出すことです。新たな成長が見込まれる産業を作り出すことは言うまでもありませんが、製造業においても、製造工程が海外に移転したとしても、新しい技術や新しい製品をを作り出すという部隊、あるいは製造するための製造工程を担う部隊などは必要ですし、これらこそが、古くから言われていた日本に求められてきたことでしょう。

国内市場では、全体のパイが大きくはなりませんので、競争がますます熾烈になってきています。ここで生き残るためには、釈迦に説法になってしまいますが、それぞれの強みを生かしていかなければなりません。製造業であれば、本当に国内でしかできないものを除いては、海外をうまく使って、例えば、協力工場を使ったりOEMを行うということも必要でしょうし、自社の商品ラインの中に、海外企業の製品を厳選しながら入れてゆくということもあり得るかもしれません。奇しくも、国内企業の海外移転を促していたのは進行する円高ですが、この円高をうまく使えば、部材などの調達原価を引き下げることが可能になります。中小企業の場合には、いきなり海外に出て行って、自前で工場を持ったり、あるいは海外で販売を行ったりというのは、リスクが大きくそう簡単な事ではないでしょう。しかし、部材や一部の製品を海外で調達することから始め、海外とのつながりも持っていくことで、また新たな展開が開けるのではないでしょうか?このまま何もしないでいることでは、企業の存続さえ望めません。

弊社では、中小企業さんの為に、部材の海外からの調達OEMの紹介など様々なサービスをご提供しています。自社ではなかなか海外ビジネスのリスクはとりかねるということもあるでしょう。そのような会社さん向けに弊社が間に入ることで、海外を利用するメリットをご教授いただけたらと思います。ご興味ある方は以下ご覧頂けたらと思います。→K2Oの「ものづくり支援(コンサルティング)」


 

安住財務大臣が報道ステーションに出演:明日の株価が下がらなければよいが・・・

先日、安住氏が財務大臣に決定というニュースが流れた際に、東証では株価が下げた、と話題になった。

その安住大臣がTVの報道ステーションに生出演とあって、どのような話をするのか興味があった。

しかし、特別会計の説明など、あまりにひどすぎる。何もわかっていない人がわかったようなふりをして発言しないほうが良い。

ぼろを出さないようにテレビに出さないほうが良かったのではないか?なぜ誰も止めなかったのだろう。

これでは官僚の言いなりになってしまうのもやむを得ないか・・・

G7にも参加するそうだが、会議の内容を理解できるのだろうか?

ただ、要は「増税します」ということをTVで発言したかっただけのようだ。野田総理は、経済成長と財政健全化を両立させるというのだが、経済成長の政策などついぞ聞いたことがない。

そのような中で、突然、増税、増税のオンパレードになってしまった。復興に向けての財源はしょうがないが、いつどこでどれだけのお金が何故必要なのかといった当たり前のことが全く議論されなくなってしまった。自民党でもっもう少しかっこはつけたものだが、今は全くそれもなくなってしまった。

明日、また株価が下がらなければよいが・・・

細野大臣:がれきや土壌の最終処分場は福島県外で?

細野大臣が、4日の会見で、「がれきや土壌の最終処分場は福島県外で」と発言しています。

「福島の痛みを日本全体で分かち合うことが国としての配慮だ」と述べ、福島県以外に設けたいという考えを示したそうです。これは第二の「普天間問題」とならないでしょうか?現在の状況を考えれば、最終処分地として手をあげる自治体などは考えられません。また、放射性物質をわざわざ福島から運んで広く全国に拡大することが良いことなのかどうか疑問です。細野大臣は何か「腹案」でもあるのでしょうか?

あえて誤解を恐れずに言いますと、現地の方々には大変お気の毒ですが、原発周辺のかなりの地域にはもうしばらく居住することは出来ないでしょう。先の菅内閣は事故対策の初動で、情報の隠ぺいを行ったが為に、その後の情報開示も後手後手です。いまだに、近い将来自宅に帰れると思っている方々も多いと思いますが、あまり現実的な事とは思えません。大人はともかく、子供たちが影響を受けることは何としても避けるべきです。

ここしばらく(多分少なくとも数十年)人が居住できない土地があるとすれば、国がそこを買い上げて、処分地として集中的に管理保管を行った方が良いのではないでしょうか?もともと住んでおられた方々には大変お気の毒ですが、これは居住されていた方々の命の問題です。政府の情報開示も後手後手で(数か月たってから発表するとか、数か月たっても発表しないとか)、政府に対する信用も何もない状況ですので、最終処分場候補地に手をあげるような自治体はなかなか見つからないでしょう。第二の「普天間問題」になるのではないかと心配です。あるいは、中間処理場として、福島においておいて、永久に中間処理場のままで放置するのでしょうか?

郵政改革法案の現実:法案反対で一番儲けているのは米国企業?

郵政改革法案に反対する理由は、米国に日本の富を奪われないため、などとよく言われる。本当だろうか?改革法案が通ると200兆円が米国に持って行かれるといった議論が良く行われている。

しかし、現在、この郵政改革法案がたなざらしにされていることで、一番、利益を享受しているのは米国企業だ。具体的には、がん保険を取り扱う「アフラック」があげられる。かつては、郵政民営化に反対していたのは、日本の銀行と保険会社だった。郵貯と簡保に顧客を奪われるのが怖かったからだ。今も、日本の銀行と保険会社のスタンスは基本的には変わらないが、銀行では一部の地方銀行などの中で、郵貯と提携することで自行の事業を拡大しようという動きも出てきている。保険会社の中でも、例えば、再大手の日本生命が簡保と提携して新商品を出そうとしている。しかし、この動きは、改革法案がたなざらしとなる中で、全く動いていない。簡保にしても日本生命にしても、みずみず新規の事業機会を失っていることになる。

かつてアフラックは在日米国商工会議所(ACCJ)の会頭を務めたこともあり、積極的に自らの日本における事業を守るために活動してきている。現在でも、もし簡保と日本生命の提携が動き出せば、同社の事業は(程度はわからないが)影響を受けることになる。外資から日本国民の資金を守ると言っているのだが、逆に外資企業を守っているという、何とも皮肉な結果になっている。

ちなみに、郵貯や簡保の資金がどのように運用されているかだが、非常に簡単に言ってしまうと負債と資産の特性を考慮して運用先への配分比率が決定される。国内外の資産運用会社にしてみるともっとリスクをとる運用を行い、その資金を受託したいという思いが強いだろうが、全体の規模からすれば、まだまだ限定的のようだ。資金の性格からすれば、株式、海外投資などはALM上ではリスクが高く、配分比率はどうしても小さくなってしまう。米国債を200兆円購入することなどはALMの計算上は絶対に出てこない数字だ。現在はまだ政府の持ち株が多いが、政府が何らかの政治的判断をして、郵貯や簡保に米国債を無理やり買わせるようなことがありうるのだろうか?このような話が流される背景にある意図を理解できていないのではないだろうか?

宝島社の広告に思う:自ら変われない日本?

92日に宝島社から添付のような全面広告が新聞各紙に掲載されました。正直、びっくりしました。この時期に、このような写真とコピーが・・・

宝島社のHPによれば、この広告の意図は「敗戦や災害など、これまで幾度となく苦境に直面してきた日本。 日本人はそのつど、不屈の精神と協調性を武器に国を建て直してきた歴史があります。世界のどこを見ても、これほどしぶとく、強い生命力を秘めた国民は存在しないのではないか。そんな気さえするのです。「いい国つくろう、何度でも。」この投げかけを通じて、日本人が本来持っている力を呼び覚ましてみたいと考えました。」

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 このメッセージは良いのですが、新聞広告には何も記載せていませんでした。1945830日、愛機バターン号から厚木飛行場に降り立つ連合国軍最高司令官ダグラス・マッカーサーの写真です。日本人は外からの圧力あるいは天変・地異のようなことが起こらないと変わらない、ということを言いたいのでしょうか?出版社からこのよう広告が出されること自体大変悲しい事態です。

 

福島原発事故:事故予測、発生当日に菅氏まで伝達?

「事故予測、発生当日に菅氏まで伝達」というニュースが、原発事故発生から半年余りもたってから報道されました。

詳細は、次のリンクから: http://news24.jp/articles/2011/09/03/07189922.html

実はこのニュースは事故発生直後にも伝えれれていましたが(そのため私たちもレポートにて発信)、大きく報じられず、この報告を受けてと思われる保安院の中村審議官の「炉心溶融発言」もその後訂正されました(中村審議官はこのため更迭され、西山審議官の登場)。

この事故予測によれば、炉心溶融は311日の夜にも起こるというもので、ベントのタイミング云々の話どころでなく、何が何でも(海水を注入する等)炉心を冷やさなければならない、ということだったはずです。また、時間的にも、12日の朝に原発を菅氏が訪問する余裕など全くなかったはずです。まさに、「天災ではなく人災」と言われるゆえんです。

5月には「事故調査・検証委員会」設置が決められ、その後、会議が開かれたようですが、どのような何様だったのでしょうか?しかし、委員会は内閣官房に設置されていますので、「政府に対する調査」を期待することには最初から無理があるかもしれません。

野田新総理の高位スタッフ職とは?:公務員制度改革は人事制度改革から

野田新総理の政権構想の中におかしな箇所があるということで話題になっている。

あまりよく見ていなかったため、改めてチェックしてみると、確かにあった。4ページ目の「(5)政治の信頼回復に全力を注ぐ③公務員制度改革の実現(天下り根絶)」の部分だ。

そこでは、「「呼び寄せ型」天下りの厳格なチェック、再就職先の公益法人等への補助金等の削減を前提に高位スタッフ職を整備する等国家公務員の再就職先の一層の適正化を図る。」とある。要は、「再就職斡旋禁止の徹底」や、従来言われたような「天下り」は厳格にチェックするが、「再就職先」は(斡旋はしないが)適正に用意する、と言っているようなものだ。これが新総理の言う「公務員改革」なのだろうか?要は、外に再就職のポストが少なくしまうので、省内に新たなポストを作ろうということだ。

前から、違和感を覚えていたのは、公務員(ここではいわゆる「上級」あるいは「キャリア」と言われる人たちを指すものとする)は、何故、入省年次でポストを決めていくのだろうか?ということだ。民間であれば、入社年次の早いものでも、遅い者の下で働くことなど当たり前だ。あくまで「基本」は能力主義だ。しかし、公務員はそうではない。年次が早い遅いどころか、同期入省者とのポジションに上下が生じないようにするために、今までは外部にポジションを用意するということで天下りが行われてきた。

また、人事異動についても、高度成長期の制度がそのまま残っており、基本は、2年程度で異動が行われる。新しいポジションに就くとなれるまで半年程度かかる。また、異動が近づくと半年程度はそわそわして落ち着いて仕事にならない。つまり2年の任期のうち1年程度しか落ち着いて仕事ができない。世の中の変化が激しくなっているし、高い専門性を求められることも従来以上に必要になっている。1人の人がもっと長期間にわたって同じ仕事をすることが求められるだろう。

給与が民間に比べて低いとよく言われるが、一般職は別だが、上級職に限って言えば本当にそんなに低いのだろうか?もし、低いのであれば、必要な金額はいくらでも払えばよい。ただし、それを正当化できるだけの仕事はしてもらわなければならない。民間と同じとは言わないが能力と実績に応じて給与を決めればよい(当然、ポジションについても差がつくことになる)。

民間でも高給を正当化するために、「良い人材を確保するためには給与を高くする必要がある」ということが言われる(特に「金融」)が、それはどの業界でも同じではないでしょうか?「ものづくり日本」であるならば製造業に良い人材がいなければならないでしょう・・・

公務員制度改革というとすぐに「天下り根絶」ということになりますが、そうではなくて「人事制度改革」を行うことがまず必要でしょう。人材が官と民の間で行き来することはある程度は構わないと思いますが、むしろ行き来するということを前提として、その場合に、官民の癒着が起こらないような仕組み(「ガバナンス」)であったり、倫理観をいかに醸成していくかの議論が必要かと思います。

バーグステン発言「ドル安は良いことだ」は米国の本音

91日の朝日新聞に「ドル安は良いことだ」というフレッド・バーグステン氏のインタビュー記事が掲載されていた。

書店に行けば「ドル基軸通貨体制崩壊」といったタイトルがたくさん並んでおり、「ざまみろ、いい気味だ」といったようなニュアンスを言外に感じることが多いが、しかし、現実は全く逆で、米国の本音はやはり「ドル安政策」です。しかし、米国の政府要人からは「ドル安」発言が出てくることは通常ありません。これは、急激なドル安が進んで、米国への資金流入が止まると困るからで、本音ではありません。

1971年のニクソン・ショック以来、50%を超える円高局面は、70年代、80年代、90年代と3回あった。為替が高くなったのは、日本だけでなくドイツも同様だで、ドイツも日本と同じように、米国に対して国際収支が大きく黒字になっていた。為替が米ドルに対して大きく上昇することで、国際収支がどのように変化したかといえば、米国の期待に反して、国際収支のポジションはほとんど変化がなかった。つまり、為替の調整では国際収支の調整は出来ないということを、私たちは学んだはずでした。

しかし、バーグステン氏は、このところ、米国が基軸通貨国として責任を負うのは荷が重いとして、ドル安への裕度委へ口先介入を図っている。かつての日本とドイツに対するのと同じように、ここ数年は中国に対しても、元を大きく切り上げるべきだと発言を行っています。

しかし、中国は日本の経験を非常によく研究しており、それを反面教師として、日本と同じような政策はとらないだろう。為替についても、方向としては、元を切り上げてゆくだろうが、非常に慎重に、ゆっくりと対応しており、その国際化についても戦略的に対応している。日本は口では国際化ということを言っていたが、積極的にそして戦略的に取り組もうとは決してしなかった。つまり、常に米国の陰に隠れていたし、その前を歩こうとはしなかった。ドル・ユーロ・円の3極体制ということも言われたが、ある意味ジョークで終わってしまった。バーグステン氏は、将来の通貨体制の姿として、ドル・ユーロ・元の3極体制あるいはドル・元の2極体制ということを言っています。

さて、米国ですが、問題は国際収支の赤字なのですが、為替では改善できないのは明らかで、米国はそれを無視して、改善しようともしてきませんでした。これを改善するには、「借金して良い暮らしをする」というような生活そのものを変えていかなければならないでしょう。リーマン・ショック以降、“マイナス”とも言われた貯蓄率が大きく改善していますが、最近は、このところ減少していたクレジット・カードの与信が増加する兆しが見えるなど、米国人がその生活様式を変えるのはかなり大変なようです。そうすると、しばらくは円高が続き、また米国のファイナンスに日本が協力しなけえればならないということになってしまいます。つまり、「お金を貸した方が悪い」という状態が今後も続くということのようです。

「嵐のPRビデオ」は「日本のイメージをおとしめる」ためのもの?:外国人記者が痛烈なコメント

「嵐がニャーと鳴く国に外国人は来たがらない」という記事がニューズウィーク(824日号)に掲載されている。

レジス・アルノ-というフランス人の記者の記事だが、「日本がここまで世界の笑いものになる例がほかにあるだろうか」と手厳しい。

これは何かというと、観光庁が外国人に日本観光を呼びかけるために作成したPRビデオに関するコメントだ。このビデオでは「人気グループの嵐」が登場して、それぞれが日本各地を訪問して、招き猫のまねをして「ニャー」と鳴きながらポーズをとるものだ。このPRビデオは世界133か国の在外公館、空港、飛行機、駅のモニターなどで流されているそうだ。

しかし、アルノー氏は、「日本のイメージをおとしめるために北朝鮮のスパイがたくらんだのかと思うほど」と痛烈に批判をしている。内容は、日本を紹介するという目的などこかに行ってしまって、嵐のPRビデオになってしまっているのに、ビデオが流される133か国のうち、129か国では嵐はほとんど知られていない。また、肝心の内容だが、日本の良いところがまるで紹介されていない。映像は嵐のアップが中心で、「沖縄も太陽は見えず、砂浜はぬかるみのよう。北海道は食堂が、鹿児島は通りが映るだけ」。「日本は美しくて洗練されたモダンな国だと外国人に思わせるような、美しい映像はない」。アルノー氏は、「日本はなぜ、「最高の顔」で自分を売り込もうとしないのか。洗練された職人や建築家、知識人、画家、料理人」などを使ったらよいのにとして、「素晴らしい国を自らばかにする。そして、その現実を誰も理解していない。」としている。まだまだアルノー氏の批判は続くのだが、さすがに日本人としてはつらくなってくる。しかし、この記事を見て、私も早速このPRビデオを見たが、なるほどと思う部分は多々あった。

今日ここでコメントしたいのは、アルノー氏が「日本のメディアが何か批判すると思っていたが、とんでもなかった」としていることで、情報番組『ミネヤ屋』では批判するどころか、司会者が「あらためて日本はいいなと思ったと言い、共演者たちも同意した」としている部分です。多額の税金を使って今回のようなPRビデオを制作することは論外ですが、一般的に言って、現在のテレビなどの番組制作や情報の流し方はこのPRビデオを制作するのと全く同じやり方ではないでしょうか?目的が、観光庁のPRビデオであれば、日本を紹介することなのですが、テレビ番組などでは、タレントの安っぽいギャグを流すことが目的のようになってしまってはいないでしょうか?スポーツ番組でも、競技そっちのけで、ゲスト(?)のタレントがギャグを言ったりしていることもよく見られます。現在、世界陸上が放送されていますが、司会者が妙にはしゃぎすぎることで、何か競技を見ることに集中できないことが多々あります。テレビ放送を行うことで、その競技が多くの人に知られるようになることはよいとは思いますが、何か安っぽいお笑い番組のようになってしまっては困ります。テレビ番組に全般にしても、どの局でも同じような番組になってしまっていますし、出演者もどこも同じような顔ぶれです。番組の内容を見せるというよりも、出ているタレントを見せているようなものです。まるで嵐のPRビデオと同じです。どこの局でも同じような番組を流すのであれば、テレビ局の数はもっと少なくてもいいでしょう。局の数を減らして空いた分を新しく個性的な番組を流したいというところにやらせたらどうでしょうか?現在、テレビ局の電波料はただみたいなものですが(規制業種で参入障壁があるにもかかわらず、これはどうでしょうか?)、空いた分をオークションで売り出せば、政府にも多額の収入が入るでしょう。消費税も含め、新政権は増税まっしぐらのようですが、まだまだやることはあるはずです。

 話が少々ずれましたが、アルノー氏が強調するように、日本には世界に誇れるような素晴らしいもの・素晴らしい人たちがたくさんいるのですから、海外にも、そしてもちろん国内でも、そのような人たちがどんどん紹介されるようになるようになったらと思います。これは何も、テレビだけの話ではありません、誰でもそれぞれ素晴らしいものを持っているはずですから、私たちの日常生活の場(地域社会、会社、家庭等々)で、それぞれ個々人が元気になるようなあり方が、必要なのでは・・・

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