2012年6月/日々雑感:よくわからないこと?!

2012年6月

【Crossroad誌:掲載記事】 『バラ科』(鈴木弥栄子)(2012年6月号)

Crossroad誌:掲載記事】 『バラ科』(鈴木弥栄子)(20126月号)

日本語と中国語のバイリンガル・マガジン『Crossroad誌』本年6月号に以下の記事が巻頭エッセーとして掲載されましたのでご紹介させていただきます。

毎月このような形で同誌の『巻頭エッセー』として、日本の若手アーティストを紹介する記事を書かせていただいております。同誌は、中国の華南地方(主として 広東省と香港)を中心に、ビジネス情報を主体としてはいますが、文化や芸術等様々な情報を発信している雑誌です。編集部は、広東省・深圳市にあります。

今回は、「鈴木弥栄子」さんの『バラ科』という作品です。

作品タイトル:『バラ科』

120520_鈴木弥栄子_バラ科.jpg

コメント

私たち人類は、太古、6000年前には、この地上に在るあらゆる存在と響き合うFEELの世界=「根源的紐帯」の中にいました。この時は、個体としては物理的に独立していても、すべての存在と見えない糸でつながっているという感性でした。しかし、この後、頭で考えるTHINKの世界が生じることで、大自然や生命体とは離れてしまいました。

これをもたらしたのは「アーリマン」と「ルシファー」という「分離感」です。アーリマンは、自分の領域を意識する、自他分離、物理的な分離感を持つ理性です。それに対して、ルシファーは、自分が思考すること(THINK)で、その場の「今」から離れる、思念の分離感です。

この2つの分離間の発達で、文明が発達してきたということなのですが、FEELの世界からTHINKの世界が発達することで、大自然や生命体から離れてしまうという問題が起こってしまいました。

私たちは、常に、「自他分離」ということを意識的に或いは無意識的に感じながら行動しています。本作品の作家は、自分で作った「皮膚」や、その皮膚を覆う長い髪や幾重にも重なるフリルの服などを、自他の境界線としてとらえます。本作品でも、ストッキングや、脚から生えているような刺も、皮膚と一体のものとしてとらえているように思われます。しかし、この自他の境界は定まったものではありませんし、その境界の存在意義自体も、自己の認識次第で変わってしまうものです。「他人を拒絶し居心地の良い孤独を作ってくれる繭」なのか、「自分自身を抑制し、縛り付ける」ものなのか、はたまた、刺のように他者を傷つけるものとなってしまうのか?作家はこれを「柔らかな檻」と表現しています。

その柔らかな檻の中には何があるのか?それは、場合によっては刺で守らなければならないような自己の「核」となるような「最も純粋」なものだろう。しかし、それは檻の中に閉じ込めておかなければならないものではなく、他者を意識することで、純粋な部分は残しながら、自身を大きく成長させ、その境界を外に向かって広げていくのかもしれない。本作品で、バラの木の純粋な核の部分から、2本の茎が互いに絡み合いながら、光り輝く天に向かって成長していくかのように・・・

(お知らせ)2012824日~98日に、FUMA Contemporary Tokyo | BUNKYO ARTにて鈴木弥栄子さんの個展開催予定です。

略歴

1979                 神奈川県に生まれる

2005                 東京芸術大学大学院美術研究科修士課程油画専攻 修了

個展

2010                 「柔らかな檻」 (FUMA Contemporary Tokyo | BUNKYO ART)

2012824日~98日に、FUMA Contemporary Tokyo | BUNKYO ARTにて個展開催予定。

グループ展

2011                 「蒼白の表層」 (FUMA Contemporary Tokyo | BUNKYO ART)

                            IN DEPTH」 (同上)

2009                 「ブンキョウアートコレクション展」 (同上)

2004                 「敏感肌」 (ギャラリーアートポイント)

2002                 「四人展」 (東京芸術大学学生会館)

アートフェア

2011                 行商〜スパイラルサーカス(青山spiral

2010                 ART TAIPEI 2010 (台湾)

アートフェア東京 2010 (東京国際フォーラム)

2009                 ART TAIPEI 2009 (台湾)

                            アートフェア東京 (東京国際フォーラム)

受賞

2008                 群馬青年ビエンナーレ2008

2005                 群馬青年ビエンナーレ2005

2003                 平山郁夫賞

« 2012年5月 | メインページ | アーカイブ | 2012年7月 »

このページのトップへ