天ぷら

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お奨めの天ぷら屋(5): 『畑中』

できるだけ多くの種類の天ぷらを食べたい、という欲張りな人にお奨めの店が麻布十番の「天ぷら畑中」です。ご主人は銀座天一、日本橋のてん茂で修行された方で、蝶ネクタイがトレードマークです。蝶ネクタイは、てん茂の影響を受けているようです。ご主人は一見、愛想が悪そうに感じますが、仕事に真摯なだけで、食べ方などの質問には、優しく応じてくれます。このお店は、どの季節に行っても食材の種類が豊富で、壁に掛けてある襖にその日のたね(食材)が20種類以上、ずらっと書いてありますので、お決まりのコースにお好みで追加するのもよし、あるいはその日のたねを片っ端から食べ尽くすのも楽しいです。天ぷら油は、焙煎した胡麻を時間をかけて搾って作る玉締め油とサラダ油のブレンドですので、胡麻の香りを残しつつ、あっさり感があり、いくつでも食べられる気がします。たねは魚貝類、野菜類いずれも充実していますが、ごぼう、蓮根といった根菜系が秀逸です。夏だと、ご主人の故郷、愛媛の巨大なすが甘みが強く、食感も抜群です。また、10月から4月頃までは、牡蠣の天ぷらが逸品です。この店の特徴は、ご主人が、たねによっては醤油でいただくことを奨めてくれることです。根菜系、なす、牡蠣などは、醤油との相性が良いことを認識させられます。場所柄、ワインをオーダーされるお客さんが多いですが、旨い日本酒も置いています。接客はサービス精神が旺盛なご主人の奥様が対応されています。

お奨めの天ぷら屋(4): 『いわ井』

天ぷらを心から愛する人にお奨めの店が銀座の「天冨良いわ井」です。銀座6丁目の路地裏にひっそりとある店です。ご主人は天一ご出身ですが、研鑚を重ねられて、天一色は殆ど感じません。食材の持ち味が最大限に楽しめる絶妙な揚げ方です。天一出身の天ぷら屋に必ずと言っていいほど置いてあるカレー粉は、この店にはありません。カレー粉は、きすなど、一部の魚とは相性がよいと思いますが、一般的には天ぷら本来の風味を消してしまうので、本来、天ぷら屋にはミスマッチかもしれません。ご主人の食材へのこだわりは極めて強く、基本的に野菜は天然ものしか使いません。春の山菜も天然にこだわり、ハウス栽培だと3月には出回る、たらの芽は、5月にようやく出荷される東北の天然ものしか使いません。たらの芽ほど、ハウス栽培と天然ものが異なる野菜はないでしょう。初夏に供される栃木の農家から仕入れる紫のアスパラガスは香りが強く、天ぷらとの相性は抜群です。魚貝類も充実しており、馴染の客の提案で始めたという、あさりのかき揚げは絶品です。10月から出される真牡蠣は濃厚な味わいで、牡蠣はフライより天ぷらの方が美味いと実感します。夏の岩牡蠣は使わず、真牡蠣で勝負、というのもご主人のこだわりです。また、コースの途中に供されるまぐろのづけは、箸休め的な感覚で味わえます。そして、このお店の一番のお奨めは、締めの天茶です。ご主人が懇意にしている銀座のお鮨屋さんで使う海苔が出汁のなかにたっぷり入っており、かき揚げとの相性のよさに驚かされます。天丼もありますが、このお店に限っては断然、天茶がお奨めです。穏やかな接客をされる奥様とともに、居心地抜群のお店です。

お奨めの天ぷら屋(3) 『よこ田』、『美かさ』

天ぷらを外で食べる機会が少ない天ぷら初心者にお奨めなのが麻布十番の「天冨良よこ田」と東急田園都市線宮崎台の「美かさ」です。いずれのお店もメニューはお任せのコース一本で、旬の食材をさっぱりと揚げてくれます。たねの数は多くありませんが、その分、リーズナブルな料金設定です。

「よこ田」は天ぷらの名門、天一ご出身のダンディーなご主人の店で、2年前に麻布十番の中で移転して席数が増え、予約が取り易くなりました。揚げ場が2つあり、一つは息子さんが担当します。ミシュランで最初に星を獲得した天ぷら屋です。天一出身らしく、カレー粉が置かれています。コースの最初にサラダが供されるのも特徴です。一品ごとにご主人が塩、天つゆ、カレー粉と、一番相性がいい食べ方を教えてくれます。油は胡麻油とサラダ油のブレンドで、軽過ぎず、重過ぎず、まさに初心者向けといえます。

「美かさ」は宮崎台の駅から2~3分のところにあり、田園都市線沿線に住んでいるのであれば、ぜひ訪問していただきたいお店です。沿線の住人でなくても、わざわざ訪問する価値のある店です。この店は、5時半と7時半の入れ替え制で、それぞれ一斉にスタートしますので、遅刻厳禁です。ご主人は東京のホテルの和食の料理人だった方で、天ぷらを揚げているうちにその魅力には惹かれ、独立されたベテラン職人です。旬の食材へのこだわりが強く、穴子は基本的に江戸前(東京湾で獲れたもの)しか使いません。穴子は目の前で裂いてくれますが、初めての方はややグロテスクな印象を受けるかもしれません。ただし、客の目の前でさばく天ぷら屋は非常に少なくなったので、貴重な体験と思ってぜひ目をくぎ付けにしてください。油は胡麻油と紅花油のブレンドで、あっさり感があります。

なお、いずれの店も人気店ですので、余裕を持った予約が必要です。また、食材が限定されていますので、いろいろな食材を片っ端から食べたいという大食漢には、あまり向かないかもしれません。

お奨めの天ぷら屋(2):『なかがわ』

天ぷらの神髄は美味い魚にあるという観点からすれば、真っ先に名前が挙がるのは、「みかわ」です。前回の「近藤」の近藤さんと東京の天ぷら屋の双璧の早乙女さんのお店です。しかし、茅場町の本店はあまりに狭いこと、早乙女さんがご自宅のある門前仲町に2年前にオープンされた「みかわ是山居」は交通の便に難があること、六本木ヒルズの支店は無味乾燥な印象があることから、あまり天ぷら屋に行く機会がない方々にお奨めしたいのは、築地の「天麩羅なかがわ」です。ご主人の中川崇さんは茅場町の「みかわ」で17年間、早乙女さんの下で腕を振るった後、7年前に満を持して独立されました。

 「なかがわ」は「みかわ」の特長である胡麻油の香ばしさ、海老を中心とした魚貝類の質の高さを引き継ぎつつ、「みかわ」では供されない素材も積極的に使います。代表例は夏の岩牡蠣で、ミルキーさと香ばしさが合体した絶品です。肉厚のきす、めごち、穴子の質の高さは、本家を超えているかもしれません。「近藤」さんほど食材の種類は多くありませんが、その分、素材は選び抜かれており、じっくり天ぷらを味わいたい人にお奨めです。テーブル席が2卓ありますが、やはり天ぷらはカウンターでいただきたいものです。クレジットカードは使えませんが、その分、良心的な価格設定になっています。接客は奥様がそつなくこなされています。

お奨めの天ぷら屋(1): 『近藤』

かつて野菜の天ぷらは魚介の天ぷらと区別して、「精進揚げ」と呼ばれており、下町に多い昔ながらの天ぷら屋は、現在でも野菜を殆ど出さないところが多いようです。しかし、私はバリュエーションが豊富で、新種も誕生している野菜こそ天ぷらの醍醐味だと思っています。野菜が苦手の人でも、ひとたび旬の野菜の天ぷらを口に入れれば、その上品な甘み、香りの虜になってしまうのではないでしょうか。

ですから、まずお奨めの天ぷら屋と聞かれれば、野菜に力を入れている店、具体的には野菜の種類が多く、しかも産地、時期に拘っている店を真っ先に挙げます。ズバリ銀座の「てんぷら近藤」が最高峰にあると言えます。「近藤」は、山の上ホテル内にある天ぷらの名門、「天ぷらと和食の山の上」で21年料理長として活躍し、同ホテルを定宿としていた作家の池波正太郎に愛された近藤文夫さんのお店です。メディアに取り上げられることも多く、知名度抜群の店ですが、年に一度、いや、一生に一度しか天ぷら屋に行かないという人こそ、この名店に行くべきです。確かに高級店ですから支払いは高額になりますが、それだけの価値がある店です。野菜は契約農家から直送しており、休みにはご主人自ら、北海道などの野菜の産地に飛んで、仕入れ先の発掘に余念がありません。「近藤」と言えば分厚い丸十(薩摩芋)の天ぷらが有名ですが、四季折々の野菜の品揃えが抜群で、特に暑い夏はその種類の多さが頂点になります。とりわけ、北海道の契約農家から届くピーマンが絶品です。このピーマン、種入りで甘みが強く、辛み、苦みは全くありません。最近、多くの天ぷら屋が扱う万願寺唐辛子と比べてピーマン独自の風味が強く、食後感は爽やかです。夏では他にとうもろこしのかき揚げも甘みが強く、絶品です。

「近藤」は魚介の種類も多く、巻きえび、きす、穴子などの定番から、旬の高級魚まで、その品揃えは随一です。中でも78月の岩牡蠣は、クリーミーな甘さに思わず唸り声が出てしまいます。夏では他に、鱧、うに、鮑も最高です。大葉で巻いて揚げた「うに」は高級天ぷら屋の定番ですが、いち早くメニューに取り入れたのは近藤さんではないでしょうか。

「近藤」の天ぷらは、素材の持ち味を最大限に発揮するため、昔ながらの香りの強い胡麻油ではなく、胡麻を焙煎せずに搾った無色、無臭の太白胡麻油と、焙煎した油を時間をかけて搾って作る玉締め油をブレンドした油で揚げています。純粋な胡麻油で揚げた天ぷらに比べると香ばしさには欠けますが、素材の持ち味を損ねないこと、油の匂いが髪や衣服に殆ど付かないなどの利点があります。

野菜の天ぷらは基本的に塩で召し上がってください。本来の風味が楽しめます。魚介類はお好みで塩、天つゆを使い分けてください。私は基本的に塩を使いますが、きす、めごち、穴子などは大根おろしをたっぷり入れた天つゆの方が相性はいいかもしれません。特に秋から冬にかけて出回る「はぜ」は、天つゆに限ります。口の中でとろけますので。

「近藤」での注文の仕方ですが、夜は天ぷらが基本の2コース、お造りの付いたコース、お任せコースの4コースです。もちろん、好きなものを注文する「お好み」もあります。滅多に行かないというのであれば、旬の食材が堪能できるお任せコースをお奨めします。ビール1杯、日本酒一合を合わせて一人2万円程度のイメージです。懐具合によって基本コースプラスお好み数品という選択もありますが、お好みをお店にお任せすると以外に高く付きます。いずれにせよ、都内でも5本の指に入るような高額店ですが、支払いに見合った満足感があるはずです。

「近藤」は銀座の一等地にあり、店内の雰囲気も天ぷら屋には珍しく華がありますが、ワイン、焼酎を置いていないなど、お酒の種類が少ないこと、カウンター席のみであることなどから、企業接待には向いていないかもしれません。このお店に限りませんが、美味い物をいただくには気の置けない仲間同士で行くのが一番です。最後に一点、この店は大きなカウンターが2つあり、手前は近藤さん、奥はお弟子さんが揚げていますが、予約時に近藤さんのカウンターの指定ができます。イケメンの息子さんもいる近藤さんのカウンターがお奨めであることは言うまでもありません。

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