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お奨めの天ぷら屋(1): 『近藤』

かつて野菜の天ぷらは魚介の天ぷらと区別して、「精進揚げ」と呼ばれており、下町に多い昔ながらの天ぷら屋は、現在でも野菜を殆ど出さないところが多いようです。しかし、私はバリュエーションが豊富で、新種も誕生している野菜こそ天ぷらの醍醐味だと思っています。野菜が苦手の人でも、ひとたび旬の野菜の天ぷらを口に入れれば、その上品な甘み、香りの虜になってしまうのではないでしょうか。

ですから、まずお奨めの天ぷら屋と聞かれれば、野菜に力を入れている店、具体的には野菜の種類が多く、しかも産地、時期に拘っている店を真っ先に挙げます。ズバリ銀座の「てんぷら近藤」が最高峰にあると言えます。「近藤」は、山の上ホテル内にある天ぷらの名門、「天ぷらと和食の山の上」で21年料理長として活躍し、同ホテルを定宿としていた作家の池波正太郎に愛された近藤文夫さんのお店です。メディアに取り上げられることも多く、知名度抜群の店ですが、年に一度、いや、一生に一度しか天ぷら屋に行かないという人こそ、この名店に行くべきです。確かに高級店ですから支払いは高額になりますが、それだけの価値がある店です。野菜は契約農家から直送しており、休みにはご主人自ら、北海道などの野菜の産地に飛んで、仕入れ先の発掘に余念がありません。「近藤」と言えば分厚い丸十(薩摩芋)の天ぷらが有名ですが、四季折々の野菜の品揃えが抜群で、特に暑い夏はその種類の多さが頂点になります。とりわけ、北海道の契約農家から届くピーマンが絶品です。このピーマン、種入りで甘みが強く、辛み、苦みは全くありません。最近、多くの天ぷら屋が扱う万願寺唐辛子と比べてピーマン独自の風味が強く、食後感は爽やかです。夏では他にとうもろこしのかき揚げも甘みが強く、絶品です。

「近藤」は魚介の種類も多く、巻きえび、きす、穴子などの定番から、旬の高級魚まで、その品揃えは随一です。中でも78月の岩牡蠣は、クリーミーな甘さに思わず唸り声が出てしまいます。夏では他に、鱧、うに、鮑も最高です。大葉で巻いて揚げた「うに」は高級天ぷら屋の定番ですが、いち早くメニューに取り入れたのは近藤さんではないでしょうか。

「近藤」の天ぷらは、素材の持ち味を最大限に発揮するため、昔ながらの香りの強い胡麻油ではなく、胡麻を焙煎せずに搾った無色、無臭の太白胡麻油と、焙煎した油を時間をかけて搾って作る玉締め油をブレンドした油で揚げています。純粋な胡麻油で揚げた天ぷらに比べると香ばしさには欠けますが、素材の持ち味を損ねないこと、油の匂いが髪や衣服に殆ど付かないなどの利点があります。

野菜の天ぷらは基本的に塩で召し上がってください。本来の風味が楽しめます。魚介類はお好みで塩、天つゆを使い分けてください。私は基本的に塩を使いますが、きす、めごち、穴子などは大根おろしをたっぷり入れた天つゆの方が相性はいいかもしれません。特に秋から冬にかけて出回る「はぜ」は、天つゆに限ります。口の中でとろけますので。

「近藤」での注文の仕方ですが、夜は天ぷらが基本の2コース、お造りの付いたコース、お任せコースの4コースです。もちろん、好きなものを注文する「お好み」もあります。滅多に行かないというのであれば、旬の食材が堪能できるお任せコースをお奨めします。ビール1杯、日本酒一合を合わせて一人2万円程度のイメージです。懐具合によって基本コースプラスお好み数品という選択もありますが、お好みをお店にお任せすると以外に高く付きます。いずれにせよ、都内でも5本の指に入るような高額店ですが、支払いに見合った満足感があるはずです。

「近藤」は銀座の一等地にあり、店内の雰囲気も天ぷら屋には珍しく華がありますが、ワイン、焼酎を置いていないなど、お酒の種類が少ないこと、カウンター席のみであることなどから、企業接待には向いていないかもしれません。このお店に限りませんが、美味い物をいただくには気の置けない仲間同士で行くのが一番です。最後に一点、この店は大きなカウンターが2つあり、手前は近藤さん、奥はお弟子さんが揚げていますが、予約時に近藤さんのカウンターの指定ができます。イケメンの息子さんもいる近藤さんのカウンターがお奨めであることは言うまでもありません。

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