2013年7月/日々雑感:よくわからないこと?!

2013年7月

【Crossroad誌:掲載記事】 『いつかすべてを受け入れる』(谷川千佳)(2013年8月号)

 Crossroad誌:掲載記事】 『いつかすべてを受け入れる』(谷川千佳)(20138月号) 

日本語と中国語のバイリンガル・マガジン『Crossroad誌』本年8月号に以下の記事が巻頭エッセーとして掲載されましたのでご紹介させていただきます。

毎月このような形で同誌の『巻頭エッセー』として、日本の若手アーティストを紹介する記事を書かせていただいております。同誌は、中国の華南地方(主として 広東省と香港)を中心に、ビジネス情報を主体としてはいますが、文化や芸術等様々な情報を発信している雑誌です。編集部は、広東省・深圳市にあります。 

今回は、「谷川千佳」さんの『いつかすべてを受け入れる』という作品です。 

作品タイトル:    『いつかすべてを受け入れる』(I will accept everything some day.)

 

いつかすべてを受け入れる.jpg

コメント 

近年、縄文ブームが巻き起こりつつあるようです。これは、新たな発掘や研究が進んで、縄文時代の土器や土偶が紹介され、その縄文文化によって表現される世界観に魅了される人たちが増えているためでしょう。縄文時代は、約15000年前から10000年くらい続きますが、15000年も前に土器を作っていた場所は、日本列島以外にはなかったそうです。また、縄文土器を作るには800度くらいの高温が必要で、これは金属の精錬もできるくらいの高温です。しかし、縄文人は金属をあえて用いずに、自然と一体化した生活、自然をあるがままに「すべてを受け入れる」生活を送っていました。

それに対して、ユーラシア大陸では、同じ頃に、シュメール文明が起こりました。シュメールでは、自然を測定・比較することで、体系化していきました。「文字」はそれによって生み出された代表的なものと言えるでしょう。その自然の体系化によって「分離感」が発生し、それが、今、私たちを苦しめている「自我」のもとになっていると言って良いのではないでしょうか?! 

縄文人のように自分自身を自然と一体化させるのではなく、測定・比較することで、「私は、〇〇・・・ではない」といった「巨大な空洞」が私たち自身の中にできてしまいます。しかし、この巨大な空洞を直視することは私たちにとって大変な恐怖となり、無意識のうちに、それを何とかして埋めようとひたすら努力することになります。しかも、この空間はブラックホールのように底なしで決して埋まることはありません。そして、その空洞に吸い込まれていったものは、いつか必ず、私たちの上から降ってきてしまいます。 

クリシュナムルティは言います。・・・「私たちはこの並外れた空虚を既知のもので満たそうとします。・・・その空虚を、さまざまな種類の知識、関係、物事で満たそうとします。・・・それが私たちの生存の過程です。」。そして、それをどうしたら良いのかという問いに対して、「あなたが「今あるもの」に進んで直面するとき、そのとき、それは終わります。なぜならそれは完全に変化するからです。・・・なぜなら、あなたが「今あるもの・現に存在するもの」を理解するなら、そのとき「今あるもの」は真実(実在)のものだから」と。 

本作品の作家は、「空虚な自我」をテーマに、「自らの存在自体が不確かなものであるという前提の下、人間の存在の意味・定義を探し求める」ために描き続けているそうです。そして、この作品のタイトルは「いつかすべてを受け入れる」で、背景には、生命の根源的な姿を表す「らせん構造」を配し、中心に描かれた女性には、自分自身の内部の自己・自我を見つめるという意味で、骨格が描かれており、そしてその内部には「万物を見通す眼」、いわゆる「プロビデンス・アイ」が描かれています。縄文人が自然界の現象をあるがままに「すべてを受け入れ」たように、作家自身がその「空虚な自我」を「あるがままに受け入れる」日も「いつか」ではなく、近いに違いありません。あるいは既に「すべてを受け入れ」ているかもしれません。 

略歴

1986年 富山県生まれ

2010年 神戸大学 発達科学部 卒業 

〈主な個展〉 

2009   「みんなその花を狙っている」(ART HOUSE・大阪)

2010 「わたしは夢のかけら」(YOD Gallery・大阪)

2012 個展(アートフェア京都2012・京都)

              「いつかすべてを受け入れる」(YOD Gallery・大阪) 

〈主なグループ展〉 

2007 「無色無形無言(パフォーマンス)」 (神戸アートビレッジセンター)

         「アートストリーム2007」(サントリーミュージアム天保山・大阪)

2008 GEISAI #11」(東京ビッグサイト)

2009 「コミックアートフェスタ009」(Hep Hall・大阪)

         「アートストリーム2009」(サントリーミュージアム天保山/YOD Gallery賞受賞)

2010 GEISAI #14」(東京ビッグサイト)

         ART OSAKA 2010」(堂島ホテル・大阪/YOD Galleryより出品)

          兵庫県立美術館ミュージアムショップ展示(神戸)

         ULTRA 003(スパイラル・東京)

         SHAKE ART!EXHIBITION 2010(みやこめっせ・京都)

2011 ASIA TOP GALLERY HOTEL FAIR HK11Mandarin Oriental・香港)

         YOUNG ART TAIPEI 2011Sunworld Dynasty Hotel・台北)

         ART OSAKA 2011(グランヴィア・大阪)

         TASTING ART EXHIBITION(阪急百貨店メンズ館・大阪)

         HANKYU MEETS ART SUMMER(阪急うめだ本店・大阪)

         MAISON DART presents Ma Chanson Favorite Vol.4″(梅田イーマ・大阪)

         CHIC ART FAIR 2011Cite de la Mode et du Design・パリ)

         萬福寺芸術祭 -EN- 2011(黄檗山萬福寺・京都)

2012 YOUNG ART TAIPEI 2012Sunworld Dynasty Hotel・台北)

         あたらしい謎がきた(門真市民文化会館・大阪)

2013   「ガーリーズエンジェル フルーツスロットル」(展現舎・大阪)

 

          「え・がく展」 (ondo/大阪)

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