ギリシャ問題における民間銀行の責任は?:金融システムの改革が必要なのでは?/日々雑感:よくわからないこと?!

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ギリシャ問題における民間銀行の責任は?:金融システムの改革が必要なのでは?

欧州連合(EU)は約10時間にも及ぶマラソン交渉のすえ、欧州債務危機の「包括戦略」を取りまとめた。激しい議論の末、民間の負担をどのくらいにするかで最後までもめたのだが、結局、50%とすることで合意したのだ。EU・国際通貨基金(IMF)の報告書によれば、第2次支援で民間が60%負担するとEUIMFの負担増はほとんどない。今回合意した民間負担50%だとEUIMFも負担がある程度増える見通しで「痛み分け」の結果といえる。「もし民間側が自発的に同意しないのであれば、ギリシャが債務不履行(無秩序なデフォルト)に陥るシナリオに反対しない」というメルケル独首相の発言が「最後通牒」になったという。http://www.nikkei.com/news/headline/archive/article/g=96958A9C9381E2E2E3E2E2E3E18DE0E5E3E2E0E2E3E39C9CEAE2E2E2

とりあえず、今回の「包括戦略」によってギリシャ及びユーロの問題は当面の時間稼ぎができたようだ。米国の株式市場は、7~9月期のGDP値の発表の影響もあり、終値で前日比339ドル51セント(2.9%)高の1万2208ドル55セントと、約3カ月ぶりの水準を回復している。

ギリシャの問題だが、もともとは何年にもわたって同国が財政管理をしっかり行ってこず、また、国の競争力を高めることが出来ない中で、財政赤字を膨らませてきた結果であることは間違いない。しかし、今回の交渉過程で、民間側は負担を追うことにかなり抵抗したのだが、民間側には何も責任がないのだろうか?

ギリシャのケースでは、ゴールドマンサックスが同国の公的債務の数値を見かけ上引き下げる行為に手を貸して、巨額の報酬を得ていたことが既に報じられている。もちろん、法的に問題があるというわけではないかもしれないが、EU統計局の基準をわかったうえで、それが厳格化される前に取引(「クロス・カレンシー・スワップ」)が行われており、事実上の、「抜け穴」を用意するような行為であったことは間違いないだろう。(ただし、これはギリシャだけでなく、他の国でも行われたことのようだ。)見方はいろいろあるだろうが、極論すると、粉飾決算に手を貸すような行為ともいえる。ゴールドマンサックスの人間が、それがどのように使われるか、公的債務の数値にどのような影響を与えるのか「全く知らなかった」と言い切れるのだろうか?

これは極端な例としても、ギリシャの公的債務が膨らんでいたことは民間銀行側も当然わかっていながら、資金を提供し続けていたのであるから、今回の危機に際して、何も責任がないということがあるのだろうか?

今回のギリシャ危機でも、結局はギリシャというよりも、民間の銀行の問題に行き着く。民間銀行の資本の積み増しなども決まったのだが、米国に端を発したサブプライムローン問題以降、世界の銀行には、巨額の公的資金が投入された。公的資金というのはとりもなおさず国民の「税金」だ。『国家対巨大銀行』(サイモン・ジョンソン/ジェームズ・クワック共著)に詳しいが、今までにこれだけ多くの資金が、1つの産業に注入されたことはあるのだろうか?しかも、民間銀行は、この20年以上にわたって、規制改革を求めてきて、政府による規制や監督は無いほうが良いのだ、と主張し続けてきたのだ。

サブプライムローン問題以降の金融危機はまだ終息したわけではないが、救済され、生き残った銀行はさらに大きくなって、以前のように収益を上げるようになっている。しかし、金融危機を引き起こした責任を取った経営者は誰もいないし、金融システムそのものも何も変わっていない。

このままでは、儲けたお金はすべて民間銀行(その社員)が手にして、損はすべて国民の税金ということになってしまう。最後は、国(国民)が尻拭いしてくれるとわかっていれば、銀行はどんどんリスクを取って利益追求にまい進するばかりだろう。金融システムの改革が必要なのではないか?

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