2011年7月/日々雑感:よくわからないこと?!

2011年7月

【Crossroad誌:掲載記事】『Dear』(Oracion~ひかり粒~斎藤ナオ展から)(2010年7月号)

斎藤 ナオ (Nao Saito

作品タイトル: Dear』(Oración -ひかり粒- 齋藤 ナオ展から)

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コメント:

うさぎに抱きかかえられているのは何だろうか?誰だろうか?・・・これは「着ぐるみ」を着た「女の子」なのだそうだ。この作品(「Dear」)に登場するのはキリンの着ぐるみを着た女の子だ。

きっと、この女の子は、着ぐるみを着ることで普段持っていないような、何か不思議な力を得る、あるいは忘れかけてしまっているものを取り戻すのではないだろうか?動物のことばがわかったり、風や草や虫たちのこえが聞こえたり、と、様々ないのちとつながることで、自身の存在を確認しているのではないか?1人1人は70億分の1だが、その1人が欠けると70億も存在しないのだ。そして、生への希望を新たにすることができる。

画面全体にはとても静かで詩的な空気が流れており、作品に登場する女の子と動物の表情や動作はいたって控えめだが、その存在そのものが何かを強く訴えかけてくるようで、自然と物語が紡ぎだされてくるようだ。

今回の作品は、『Oración-ひかり粒』という作品展に出展されたものです。「Oración」とは、スペイン語で“祈り”という意味だそうで、福島県の郡山に在住している作者の311日の東北大震災を受けての気持ちが作品に込められているようです。このような未曾有の災害を目の当たりにして、いま私たちは、様々な命とつながることで、生への希望を新たし、再生・復興に向けて強い気持ちを持ちたいものです。また、「天災」から「人災」へと被害が広がらないように、私たち大人たちも作者のように着ぐるみを着て、多くのいのちとつながることで、自分自身を見つめる直し、いのちというものを大切にしていかなければならないのかもしれません。

略歴::

1982       福島県郡山市生まれ

東北芸術工科大学

芸術学部美術科洋画コース 卒業

2004       卒業制作選抜賞(東京銀座東和ギャラリー)

2006       FUKUIサムホール美術展 奨励賞

              51回 郡山市総合美術展 市長賞

              公募 ふるさとの風景展 準大賞(喜多方市美術館)

2007       61回 二紀展 初入選(東京国立新美術館)

              以降 毎年入選

              52回 郡山市総合美術展 美術賞

              公募 ふるさとの風景展 大賞(喜多方市美術館)

2008       62回 福島県総合美術展 福島県美術奨励賞

2009       福島県美術協会展 大勝堂賞

2010       55回 郡山市総合美術展 市長賞

個展

2007       6月 「saito naomi exhibition 黄色の風」Romjen(郡山)

2009       3月 「-夢を紡ぐ少女-齋藤ナオ展」(池袋東武)

              4月 アートフェア東京2009 2人展 (東京国際フォーラム)

2010       4月 アートフェア東京2010「-夢を紡ぐ少女-齋藤ナオ」(東京国際フォーラム)

              10月 「-夢を紡ぐ少女-齋藤ナオ展」(広島福屋)

パブリックコレクション

              喜多方市美術館


 

【Crossroad誌:掲載記事】『女の子は何でできている?(篠原愛)』(2011年6月号)

篠原 愛 (Ai Shinohara

作品タイトル:『女のコは何でできている?』(油彩、キャンバス)

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コメント:

きれいな絵だなと思い、近くに寄ってみて驚いた! 少女の裂けたお腹からは学生かばんの中身をぶちまけたように様々なものが飛び出している。ゼリービーンズ、チョコレート、ケーキ、ドーナッツ、デコを施した携帯電話、指輪、リップスティック、マニキュア、ぬいぐるみ・・・また、少女の内臓を食いちぎるワニや金魚、そしてそれを追いかけるように猫も飛び出してきている・・・

更に近寄ってみると、ゼリービーンズに交じって小さな花びらなども見つかる。

画面にはたくさんのものが描かれているが、実に細部にまできちっと描かれている。全体としては非現実の世界を描いているにも拘わらず、何故かその非現実の世界を不思議と自然に受け入れてしまうのは、何故だろうか?

篠原さんの作品には、「少女」「内臓」「動物」「花」などが登場する。作品を見ていて、何故か松井冬子さんを思い出してしまった。しかし、松井さんのように強いメッセージ性はそれほど感じられない。どちらも女性(少女)が登場するが、松井さんのように「ジェンダー」を意識させるものではないし、篠原さんによれば、少女はアニメを描いていた時からのものだという。

唯一メッセージ性のあるものとしてあげるとすれば、「生」への意識、であろう。他作品に登場する自傷の痕跡から自虐的な印象をもたれることもあるようだが、死に向かい合うことで生をよりポジティブにとらえ、受け入れていこうとしているように思われる。本作品でも、少女から飛び出した内臓からは花々が美しく成長し、蝶が舞うことで、生そしてその連続に対する望みや希望のようなものを感じさせる。このように対峙していくことで、様々なものが顕在化し、作品も変わってくるのかもしれない。

略歴:

1984   鹿児島県生まれ

2007   多摩美術大学絵画学科油絵専攻 卒業

個展:

2007       ギャラリーQ(東京)(5月及び12月)

2008     ギャラリーQ(東京)

 

Mehr Gallery (ニューヨーク)

 

2009       Gallery Momo Ryogoku(東京)

2011       Gallery Momo Roppongi(東京)

グループ展:

 

2007       The Party(Gallery Q)(東京)

 

2008       「三人展」(Mehr Gallery(ニューヨーク)

2009       「第28回損保ジャパン美術財団選抜奨励展」損保ジャパン東郷青児美術館(東京)

              Summer Group Show Hop Step Jump(Gallery Momo Roppongi)(東京)

 

2010       「再生 Part.I(Gallery Momo Ryogoku)(東京)

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